【飲食店開業】魚の仕入れ方法とは?仕入れ方法別のメリット・デメリットをご紹介
お店で魚を扱いたいけれど、どうしても仕入れに専門的な知識やノウハウが必要なため二の足を踏んでいる飲食店の方も多いのではないでしょうか?更に飲食店の場合、どうしても市場に足を運ぶ時間やコストが心配になります。
今回は、飲食店における魚の仕入れ方法や仕入れ方法別のメリット・デメリットをご紹介していきます。
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飲食店が魚を仕入れる流通について
飲食店が魚を仕入れるには、色々な方法やルートがありますが、まずは魚の流通についておさらいをしておきましょう。
- 漁師が魚を獲る
- 浜仲買あるいは漁連(漁協)が漁師から魚を買い付けて卸売市場へ販売する
- 卸売市場(中央卸売市場、地方卸売市場、その以外の卸売市場)は卸売商に販売する
- 卸売商は仲卸商に販売する
- 仲卸商は、通常卸売市場内に店舗を持ち、魚を小口に分けたりし、そこで鮮魚小売店や飲食業へ販売する
- 鮮魚小売店(魚屋)は飲食店や一般消費者に販売する
- 飲食店は調理してお客様に提供する
上記全てのルートを経ると、浜仲買、卸売市場、卸売商、中卸商、小売店の5つの業者が関係してきます。5つの業者には、それぞれが行わなければならない大事な役割があります。特に、仲卸商は水揚げされた魚を評価し、適正な価格で買取、販売する重要な位置づけとなります。一般の飲食店が魚を仕入れる場合は小売店、または市場に行き、仲卸店から買う場合が多いでしょう。
しかし、上記のように流通ルートが多層にわたっているため経費もかかり、魚の鮮度も落ちてしまいます。このルートでは価格が上がる傾向にあるため、飲食店などが既存の流通を経ないで漁師から直接魚を買い取る、中抜きと言われる方法も行われています。こうした方法は、いわゆる獲れた魚を船ごと買う「一艘(いっそう)買い」と呼ばれ、大手の外食チェーン店などがこの方法を採用しています。一艘(いっそう)買いなら鮮度を保ちつつ、流通経費を大幅に削減し、安価で仕入れることが可能でしょう。ただし、どんな魚が採れているか分からないなどのリスクもありますので注意が必要です。
鮮魚の仕入れ方法
主に魚の仕入れ方法は「市場」「産地直送」「スーパーや鮮魚店など小売店」「インターネット仕入れサービス」の4つの方法があります。それぞれの特徴やメリット・デメリットをご紹介します。
市場へ行って仕入れる
最寄りの地方市場(地方卸売市場)や中央市場(中央卸売市場)へ足を運んで、現物を自身の目で確認して仕入れる方法です。日本最大の取扱高を誇る中央卸売市場である豊洲市場(旧築地市場)には、毎日多くの料理人の方や飲食店のバイヤーが足を運び、自らの目で魚を選んでいます。
市場へ行って仕入れるメリット
- 自分の目で気に入ったものを仕入れられる
- 安く仕入れられる可能性がある
- 珍しいものや掘り出し物が多い
市場へ行って仕入れるメリットは自分の目で気に入ったものを仕入れられる事です。最も自分の店に合っているものをチョイスできるのは市場に行く最も大きなメリットではないでしょうか。
市場から直接仕入れれば、基本的にはいわゆる中間マージンを省いた価格で仕入れることができるため食材が安く仕入れられる可能性があります。さらに市場での付き合いが長くなってくると、仕入れの際に値引きしてくれたり時化の際に優先して良い魚をとっておいてくれたりすることもあります。
例えばマグロの希少部位や一般には流通していないような魚種や、水揚げ量が極端に多かったために相場が急落した鮮魚など、市場には日々様々な発見があります。これらをうまく活用することができれば、生の情報を食べに来てくれたお客様へ伝えることができたり、珍しい食材や料理で他店と差をつけることができるのではないでしょうか。
市場へ行って仕入れるデメリット
- 移動コスト、時間コストがかかる
- 仲卸業者との信頼関係を築くのに時間がかかる
仕入れの際に市場に行くということは、当然ながら移動コストと時間コストが発生します。市場に行くまでのガソリン代や高速代、車がない場合は電車やバスの運賃など、費用もかかるうえ朝仕入れに行かなくてはならないので疲れもたまります。
市場では主に仲卸業者から食材を仕入れることになると思いますが、仲良くなって有益な情報を得るには毎日足繫く通ったり、ある程度の量を仕入れないとなかなか相手にしてもらえなかったり…なんてこともあります。最近ではそんな仲卸業者は少なくなりましたが、鮮魚が多く獲れていた時代を引きずっていて気難しい人も多いです。市場で信頼関係を築くのもなかなか骨が折れます。
産地直送
現在では流通や保冷の発達によって、九州や北海道で朝水揚げされた鮮魚が夜には東京で食べられるというレベルになっています。
産地直送のメリット
- 生産者や漁獲者がわかる
- より新鮮な食材を手に入れられる可能性がある
- より安価に仕入れられる可能性がある
たとえば北海道の牡蠣生産者から直接牡蠣を送ってもらうことで「北海道●●産地直送の牡蠣」などとお客様へ情報を提供することができます。
産地直送することにより、水揚げされたばかりの鮮魚をすぐに送ってもらい食材を手に入れるまでの時間を短縮できる場合があります。しかし現在の鮮魚流通は非常に高度化しています。後述しますが、産直でも市場で仕入れても鮮度は変わらない可能性があります。
産地からうまく直接仕入れができれば、東京では高値がついている鮮魚が数分の一くらいの価格で仕入れることができる可能性があります。
産地直送のデメリット
- 価格や品質が不安定になりがち
- 産直なのにむしろコストが上がる可能性がある
生産量がある程度読める野菜や果物と違って、鮮魚は海の状況や漁模様によってはまったく水揚げがなかったり、魚の状態がいまいちなものばかりなんてこともあります。産地の方は飲食店の要望に応えようと、相場が高い時でも一生懸命仕入れて発送しようとしてくれるため、食材が届いてから「この品質でこの価格!?」なんてことも非常によくあることです。また、欲しいときに欲しい魚種や欲しいサイズの水揚げがあるとは限りません。産地直送はある程度妥協して折り合いをつける必要があるのです。
産地直送は基本的に宅急便などを利用することになるはずです。通常の市場流通のように大きな専用トラックで市場に何トンもまとめて運ぶわけではないので、運搬コストが非常に割高になります。たとえば5kg分の鮮魚を発送しようとすると、宅急便で運んだ場合は氷や発泡スチロール代金などを含めると1箱で2,000円近くかかる可能性がありますが、市場流通の送料なら数百円で済むのです。
スーパーや鮮魚店など小売店
続いてスーパーや鮮魚店など小売店からの仕入れについてですが、手軽に仕入れられますが差別化を図ることは難しいという特徴があります。
小売店から仕入れるメリット
- 仕入れにかける時間が短縮できる
最寄りのスーパーや鮮魚店などを利用できれば、仕入れにかける時間が大幅に短縮できます。配送業者の都合によって入荷が遅れたりすることもないため、配達はまだかなーというストレスもなくすぐに仕込みができるでしょう。
小売店から仕入れるデメリット
- 鮮度や品質
品質は市場から仕入れるよりも一段劣るスーパーや鮮魚店で陳列される鮮魚は、基本的に一番重視しているものが価格です。一般家庭は価格に非常にシビアなため、悪い言い方をすれば「少し高くても良い魚、よりは少し鮮度が落ちても安い魚」を並べるのがスーパーの常識となっています。市場の仲卸は逆に、飲食店の欲しい品質をきちんと理解しているので多少高くても品質の良い魚を仕入れてきます。そこに明確な品質の差が出てくるのです。
インターネットの仕入れサービスを利用
最近ではインターネットで簡単に鮮魚を注文できるサービスが増えてきており、近年急激にシェアを伸ばしている印象があります。
インターネット仕入れサービスのメリット
- いつでもどこでも鮮魚を注文できる
- 鮮魚の産地やサイズがはっきりしている
- レア魚も見つかる
飲食店からでも家からでも外出先からでもスマホから注文することができるため、仕入れにかける時間は短縮できるでしょう。電話がつながらなかったり正しく注文が通っていなかったりFAXが届かなかったり…なんていう前時代的な心配をする必要もありません。
インターネット仕入れなら事前に鮮魚のサイズや魚種、産地などがある程度はっきりしているため、翌日のメニューが立てやすいのもメリットのひとつでしょう。
市場などにない魚も多く仕入れられます。産地直接仕入れで美味しいお造りなどをウリにしているお店では、差別化ができます。
インターネット仕入れサービスのデメリット
- 費用が多く発生する場合も
少額の場合は送料がかかる場合もあります。品質や鮮度にはバラつきがあり、必要な商品が欠品になっている可能性もあります。そしてネット注文は基本的に、値下げ交渉はできません。
まとめ
いかがでしたでしょうか?今回は、飲食店における魚の仕入れ方法や仕入れ方法別のメリット・デメリットをご紹介しました。
魚は国民食であり愛されている食材であるがゆえに慣れ親しんだ魚に対する評価は厳しく鮮度が良くないものを出すお店はすぐに見抜かれてしまいます。その反面、美味しい魚を出すお店はそれだけで評価されます。魚という食材は鮮度を見極めて仕入れることができるだけで他店との差別化できる強い食材でもありますので、自店舗に最適な方法で仕入れ先を選んでいきましょう。