【飲食店】原状回復工事とは?原状回復工事の内容や依頼フローについて解説
飲食店を経営していれば、その場所からの撤退が必要になることはあるでしょう。また順調に経営が進んでいたとしても、店舗を移転することもあるでしょう。テナントとして入居している場合には、契約を終了して終わりではありません。原則的に原状回復工事を行い元通りの状態にして返さなければなりません。
今回は、原状回復工事についてや、原状回復工事の内容や依頼フローについて解説していきます。
原状回復工事とは?
賃貸借契約を結んでいるテナントは物件の契約が終了して退去する際に、物件を明け渡すだけではなく借りる前の状態に戻して返却しなければなりません。この物件を元の状態に戻すことを原状回復とよびます。そしてその工事を原状回復工事と呼びます。
店舗などの事業用の賃貸借契約では、借主に原状回復が求められるのが一般的です。これは、事業用の賃貸借契約は営利を目的としているため、人の出入りも非常に多くなり、経年劣化による消耗としては考えないからです。そういった視点から、事業用の賃貸借契約では、原状回復についての特約が広く認められることが多いです。
原状回復工事の内容
それでは原状回復工事とは具体的にどのようなものなのか見ていきましょう。工程は大きく「内装解体工事」と「修繕工事」に分類することができます。
内装解体工事
店舗を新規で出店したりオフィスを開設したりする際には、多くの場合に内装工事を行うでしょう。しかしその際に借り手側の都合で新たに設置した設備や看板・パーテーションなどの造作、備品といった不要なものは、テナントの退去時に撤去・解体しておかなければいけません。
修繕工事
賃貸借契約によっては原状がスケルトン戻しではなく、床・壁・天井を塗装し直したり、クロスを張替えたりと修繕工事を行わなくてはなりません。要求される原状は物件ごとに異なるので、オーナーと業者間での現場での確認や話し合いが必要となります。
廃棄物の撤去
原状回復工事では工事で排出された廃棄物の処理も含まれています。というのも工事に伴って排出される廃棄物は、原状回復工事を行う会社が処理することが義務付けられているからです。
原状回復工事費が多くかかるのはこんな店舗
原状回復工事の費用が高くなりがちな条件というものがあります。以下にあてはまる店舗ならば、予め予算を多めに計画しておいたほうが無難になります。
- 喫煙可の店舗タバコの染み付いたにおいや汚れによるクリーニングや修繕が必要なことがあります。
- 厨房区画・設備を大きく変更した場合床下にあるガスや給排水設備の配管や電気の配線も大きく変わっているため。
- 搬出入のしにくい店舗建物の地下や2階以上の空中階に店舗があったり、店舗までの階段や通路が狭かったり、入り口が小さかったりするところ。
- 壁や床の傷みが激しい厨房機器(重量物)の移動などの過失による損耗も修繕が求められることが多い。
- 多数の個室などで間仕切りが多いところ造作物の撤去に費用がかかるため。
原状回復工事の押さえておくべきポイントとは?
原状回復工事の費用をできるだけ抑えるために気をつけておくべきポイントについてもご紹介します。
必ず相見積もりを取る
原状回復工事の施工業者が物件所有者・貸主から指定されている場合は少なくありません。それでも、複数の業者から見積もりを取り、指定業者との見積もりを比較して価格交渉をすることができますので、トライしてみましょう。その際には、工事日数についても検討するのを忘れないようにしてください。
原状回復業者に指定はないか確認をする
開業後や店舗移転などの際には、原状回復の指定業者について考える必要があります。一般的に原状回復工事は賃貸人が指定する業者で行わなければならないという成約があり、賃貸借契約にその旨が記載されています。ただし、賃貸借契約にサインしてから工事業者の変更は難しいものの、賃貸人との交渉次第では指定業者の変更が可能な場合もあります。交渉が可能な場合は賃貸人とよく話し合い、お互いが納得の行く業者を選ぶことが大切です。
近隣や建物の制約を確認をする
物件の近隣の建物によっては原状回復工事について制約を受ける場合があります。たとえば周囲の店舗が営業中の場合は原状回復工事が行えないため、店舗の閉店時や夜間に限定されることもあります。いざ原状回復工事というタイミングで制約により工事ができないとなれば、工事業者にも迷惑がかかることになります。工事の時期がズレたり、余計な費用をかけないようにするためにも事前に条件を確認しておきましょう。
契約満了時までに終了させる
工事期間はなるべく短期間にすませたいところですが、作業中に予期せぬ事態が発生するとも限りませんので、物件返却日までに必ず終了するように、余裕をもたせた日程にしてください。間に合わないと、さらなる賃料が発生したり、違約金の支払いを求められたりするので気をつけましょう。
原状回復工事の依頼フロー
ここからは、実際の原状回復工事を依頼をする際のフローは以下の順番になります。
- ①解約予告
- ②原状回復業者の選定
- ③現地調査
- ④見積依頼
- ⑤発注
それぞれについて説明していきます。
①解約予告
飲食店を閉店して退去する場合には、解約予定日より3か月〜半年前などに、大家さんや管理会社に通知することが契約によって義務付けられています。そして、解約を予告してから退去するまでの賃料は支払わなくてはなりません。この予告期間を長くとっている物件もあるので注意しましょう。賃貸契約では2年や3年などの契約期間があります。本来であれば、その期間は必ず借りなくてはならないのですが、それより短い期間で契約を解除する場合には、予告から退去までの賃料を払わなくてはなりません。
ただ、賃貸借契約の内容によっては、解約予告期間中でも居抜きで新しい賃借人が決まった場合などには、解約予告期間中の賃料が免除される場合もあります。大家さんや管理会社に確認しておきましょう。
②原状回復業者の選定
実際に原状回復工事を行う業者を選定していきます。業者を選ぶ際にポイントとなるのが、必要以上に激安を主張する業者には注意が必要ということです。明らかに他社より安い場合は、欠陥工事を疑ったほうがよいです。工事には最低限必要な経費があり、それを超えて減額するということはどこかしらに歪みが生じている場合が多いのです。
③現地調査
次に物件の現地調査を行っていきます。必ず物件の管理会社と原状回復業者を同席して、工事範囲や工事区分を確認していきましょう。工事範囲が明確でない場合は必要以上に解体してしまてしまい、工事金額が通常より高くなってしまう原因となるかもしれません。
④見積依頼
上記でもご紹介しましたが、原状回復工事の見積は2-3社で行うようにしましょう。市場原理で価格の適正化を図るのが目的です。しかし見積を依頼する業者の数は増やしすぎないほうがよいです。スケジュールや見積をまとめる側の労力もかかりますし、原状回復工事業者は失注のリスクが高い仕事に対しては真剣に向き合ってくれないでしょう。
⑤発注
原状回復業者から提出された見積書を比較して、自裁に依頼する会社を決定しましょう。支払い条件などの諸条件を詰めて契約書にサインすれば、正式に発注が完了です。
原状回復費用は業態によって違う!?
一般的に、原状回復工事にかかる費用は店舗のタイプで変わってきます。たとえば、物件契約後に間仕切りや造作をあまり変えることなく開業した飲食店の場合には、原状回復費用は高額になりにくいといえます。原状回復費用をできるだけ抑えたいなら、物件契約後に増設をしないよう工夫すると良いでしょう。
原状回復費用を軽減しやすい業態
原状回復費用を軽減しやすいのは、カフェ・喫茶店・テイクアウト中心の店舗などが挙げられます。これらの業態の飲食店は、「人の出入りが少ない」「油汚れの心配があまりない」などの理由から、原状回復の費用もそれほど高額になることはあまりありません。しかし、間仕切りや造作物を増設した場合には、原状回復費用も多くかかる傾向にあります。
原状回復費用がかかりやすい業態
原状回復費用がかかりやすい業態は、ラーメン屋や居酒屋、焼き肉屋などです。これらの業態は、「開業時に厨房設備を大きく変更している」「排水設備が詰まっている」などのケースが多く見られます。他に、これらの業態の飲食店では喫煙が認められている店舗も多いことから、退去時のメンテナンスやクリーニングにかかる費用が高額となるケースもあるため注意が必要です。
まとめ
いかがでしたでしょうか?今回は、原状回復工事についてや、原状回復工事の内容や依頼フローについて解説しました。
原状回復工事はすでにあるものを借りる前の状態に戻す工事ですから、店舗やオフィスを作るときに比べて金額のコントロールが難しいです。そして原状回復工事には、かなりの出費が予測されます。そのため、物件所有者・貸主と認識が食い違い、トラブルになることも少なくありません。
まずは、賃貸借契約書をよく確認しましょう。また、物件所有者・貸主とは、日頃から良い付き合い方をしておくようにしましょう。退去時に、場合によっては斟酌してもらえることもあるかもしれません。