飲食店M&Aのメリット・デメリットと流れについて解説
飲食店において、最近は「M&A」形式の売買のニーズが高まっています。今回は、飲食店のM&Aのメリット・デメリットと流れについて解説していきます。
そもそもM&A(合併・買収)とは?
Mergers(合併) & Acquisitions(買収)の略で、他社を自社に取り込んだり、買収することで傘下においたりすることをいいます。異なる企業が一つの事業体になる、または一つのグループに属すことになりますので、オペレーションにおいて検討すべきことが多かったり、会計・税務上も専門性の高い知識・経験が必要になります。
M&Aの手法には株式譲受(株式譲渡)・新株引受・株式交換、事業譲渡、合併、会社分割などの様々な手法があります。中小企業の(狭義の)M&Aにおいては実務上9割前後が株式譲渡となっております。
飲食店M&Aのメリットは?
飲食店のM&Aにはどのようなメリットがあるのでしょうか。飲食店を売却する側(譲渡側)、買収する側(譲受側)それぞれの主なメリットは以下の通りになります。
売却側(譲渡側)のメリット
後継者問題を解決できる
後継者がいない飲食店を売却することにより、廃業せずに事業承継をすることができます。
円満にリタイアができる
経営状態の良い飲食店の場合、オーナーはM&Aによって創業者利益を得て円満にリタイアできる可能性があります。
事業を整理できる
M&Aは事業の一部のみを対象に行うことができます。たとえば、複数の飲食店を経営している場合、不採算店だけを対象にM&Aを行い、経営状態の良い店舗に経営資源を集中させることができます。
従業員の雇用を守ることができる
飲食店を廃業してしまうと、それまで働いていた従業員は職を失ってしまいます。その点、M&Aの場合は、譲受企業が店舗の営業を行うにあたって従業員の雇用を継続するケースも多く、従業員は同意の上、そのまま働き続けることが一般的です。
買収側(譲受側)のメリット
飲食業界に新規参入できる
M&Aですでに営業中の飲食店を買収することによって、飲食店経営のノウハウがなくても、異業種から飲食業界に参入しやすくなります。
既存事業とのシナジー効果が期待できる
新たに飲食事業に参入することによって、社内の既存事業とのシナジー効果が期待できます。特に飲食業と関連性の高い宿泊、観光、農業、食品などの事業を手掛けている場合は、その強化に役立つ可能性もあります。
スケールメリットが期待できる
すでに飲食店を経営している企業の場合、M&Aで経営する店舗数が増えることによってスケールメリットが増し、仕入れや物流の合理化、企業としての知名度UP、採用の効率化などが期待できます。
飲食店M&Aのデメリットは?
このように様々なメリットがあるM&Aですが、当然、デメリットもあります。メリットだけでなくデメリットもしっかり理解した上で、M&Aを実施するかどうかを判断するようにしましょう。
売却側(譲渡側)のデメリット
経営方針が変更される可能性がある
譲渡先によっては、飲食店の経営自体は承継されたとしても、店舗で出すメニューやレシピ、調理方法まで受け継がれるとは限らないため、店舗の運営スタイルが変わってしまうことがあります。また、業暦の長い店舗などでは、伝統の味が失われてしまうおそれがあります。
費用がかかる
親族や従業員に事業を承継する場合は特に費用はかかりませんが、M&Aによって第3者に承継する場合は、仲介を行う事業者に手数料として一定の費用(後述)を支払う必要が生じます。
買収側(譲受側)のデメリット
従業員とのトラブルが起きるおそれがある
買収した飲食店でもともと働いていた従業員を引き続き雇用した場合、コミュニケーションや相互理解が進まず、トラブルに発展する恐れがあります。
地域社会とのつながりが薄れ、経営状態が悪化するおそれがある
地元密着型の飲食店の場合、旧オーナーが培ってきた地元顧客とのネットワークが活かせなくなることにより、経営状態が悪化するおそれがあります。
投資を回収できないおそれがある
思うように収益が上がらずに管理コストばかりが増えてしまったり、期待していたほどのスケールメリットやシナジー効果が出ずに、投資した資金が回収できない恐れがあります。
M&Aの流れについて
では、M&Aはどのような流れで実施するのでしょうか? 例えば仲介業者を通して売買を行う場合は以下のSTEPで進んでいきます。
- ①案件の概要確認
- ②意向表明・基本合意・監査
- ③契約・引継ぎ
それぞれについて説明していきます。
①案件の概要確認
まずは、ノンネームシートという簡易的な概要書を確認し、興味がある場合は情報を取り扱っているM&A仲介企業に問い合わせる。そして、詳細概要書の提供を受け、具体的な概要(店舗所在地、賃貸条件、経営状態や債務の有無、従業員の引継ぎ条件)などを確認する。
②意向表明・合意・監査
M&A仲介を行う企業との提携仲介契約を結び、希望売買代金や買収にあたっての諸条件を記載した意向表明書を、M&A仲介者を通して売り手側に提出する。売り手側も売買交渉を進めたいという意向となった際には基本合意契約を締結する。一定期間の独占交渉権を獲得して、より詳細の交渉・監査に入る。決算書類などの財務諸表や、従業員の就労条件、不動産の賃貸条件など詳細を買い手側で査定する。
③契約・引継ぎ
買収監査終了後、すべての条件が整ったら、M&A契約とそれに紐づく契約(賃貸借契約や、従業員の雇用契約、取引先との売買契約など)を行う。譲渡成立後、オペレーションやレシピなど、店舗運営に関わることの引継ぎを行っていく。
まとめ
自社でM&Aを進めていくことも可能ですが、専門的なことが多く、最適な値段・方法で進める為に、M&A遂行に関わる業務を専門に行う企業に相談・依頼をすることをおススメします。
売手と買手のマッチングを行い、中立的な立場で円滑に商談を進めるM&A仲介業者や、売り手または買い手のどちらかを専属でサポートするM&Aアドバイザーなどの専門家がいますので、ぜひ有効活用しましょう。