行政庁への届出や許可を取得する際の専門家『行政書士』とは?
飲食店を開業する際には、複数の行政庁への届出や許可を取得しなければなりません。これらの手続きを開業者様ご自身がすることは可能ですが、不慣れな書類作成を自身でされるのは、開業準備をされている中で時間もかかり利益も創出しません。
そこで今回は、飲食店における行政庁への届出や許可を取得する際の専門家『行政書士』について解説していきます。
行政書士とは?
「行政書士」は「行政書士法」に基づく国家資格者であり、弁護士や司法書士と同じ、法律の専門家です。
行政書士は役所に提出する許認可等の申請書類の作成並びに提出手続代理、権利義務や事実証明に関する書類作成等を行う国家資格者であり、会社設立や許認可申請のサポートや企業経営に対するアドバイス等を行っています。
主な仕事は官公署に提出する許認可などの書類を作成、提出の代理です。行政書士が扱える書類は1万以上とも言われています。許認可以外にも契約書の作成、内容証明郵便の作成、遺言書の作成、相続手続き、などがあります。
士業はそれぞれの分野において分けられており、司法書士なら登記関係(法務局)、税理士なら税金関係(税務署)といった形になります。
行政書士の主な業務
ここからは、行政書士の主な業務についてお知らせします。
許認可
新しく事業を始める際には、法律上、許可や届出等をしなければ営業ができない業種があります。後述する許認可の申請・提出は行政書士の業務です。
特に飲食店を開業する際には多岐にわたり、「飲食店営業許可(お店の管轄の保健所)」「深夜酒類提供飲食店営業の届出(警察署)」「防火対象物使用開始届出(消防署への届出)」などが必要になります。
※深夜酒類提供飲食店営業の届出は主にお酒を提供していて、飲食店が夜0時以降も営業する場合に警察署に提出
その他、不動産業なら不動産免許、旅行業なら旅行業許可、医薬品販売なら医薬品店舗販売許可など、特定の業務をするために様々な許認可等が必要になります。その場合、申請・提出は行政書士の業務になります。
土地開発・農地転用
土地を購入したり、土地を相続した際に、建物を建てたり、駐車場にしたり何かで活用しようとする場合、自分の土地だとしても、すぐに建物を建てられない場合があります。それは国が無断で乱開発の防止や農地の敷地を確保するために規制したルールです。
そういう時は「土地開発許可」や「農地転用」などを申請しないといけません。こちらも行政書士の業務範囲内になります。
外国人在留資格(ビザ)・帰化
昨今、外国人を採用する企業が増えてきております。外国人を採用する場合、どうすればわからないという企業さんはたくさんあります。外国人が日本に滞在するためには、「在留資格(ビザ)」が必要になります。仕事であれば「就労ビザ」、留学であれば「留学ビザ」など、様々な種類のビザが存在しています。
出入国管理に関する一定の研修を受講し、効果測定という試験に合格した行政書士で、申請人に代わって申請書等を提出することが認められた行政書士に限りますが、外国人ビザ申請の代行なども行政書士の業務です。
会計記帳や給与計算
行政書士に会計帳簿の記帳や給与計算を任せることができます。会社設立当初は業務に追われ、記帳などを行う時間がとりにくいものです。事務処理業務をアウトソーシングすれば経営に専念する時間を確保できる上、経理等の担当者を雇う人件費等を削減できます。但し、決算申告に関しては、税理士や公認会計士の独占業務ですので、行政書士はできません。
契約書作成、チェック
自社製品・サービスの販売・提供に関する契約については自社で契約書を準備するのが一般的です。それら契約書の作成を行政書士に依頼することができます。
日常的な契約では、大手会社からの定型契約書に機械的に記名・押印を求められることも少なくないかと思われます。しかし、契約相手から提示された契約書の場合、自社にとって不公平な条項が盛り込まれている可能性があります。契約前にその条項がどの程度不公平で、その不公平が許容に耐えられるのかを検討することが大切です。行政書士が契約内容についてチェック・アドバイスすることで、契約により発生しうるリスクを理解し軽減することができます。
その他
その他にも、相続手続きや遺言書作成。自動車登録申請なども行政書士の業務範囲です。
飲食店営業許可申請で行政書士が代理できる範囲とは?
それでは営業許可申請を行政書士に依頼した場合、どこまでの業務をお願いできるのでしょうか。
行政書士ができる業務
飲食店営業許可においては、概ね以下のような業務に分類できます。
- 許可申請書の記入
- 営業設備の大要記入
- 申請用図面の作成
- 保健所との事前協議
- 許可申請所の提出
- 保健所の現地調査立会い
- 営業許可証の受領
基本的にはこのどの項目も行政書士が行える業務です。依頼主の意向にもよりますが、許可申請書の記入から許可証の受領までを一貫して行政書士に依頼した方が、保健所とのつながりも密になり、業務がスムーズに運ぶと考えられます。
他の業務との連携
行政書士に依頼するメリットは他にもあります。それは飲食店営業許可申請に関しては、多くの場合、他の申請手続も伴うからです。他にどんな申請が想定できるのかお知らせします。
- 道路占用許可:建物に取り付けた看板や庇形状の日よけが道路に突出する場合
- 道路使用許可:上記の他、宣伝ビラを街頭で配る場合
- 防火対象物使用開始届:消防署への届出
- 用途変更の確認申請:改装前が飲食店以外の用途で面積が100㎡を超える場合
- 第一種動物取扱業の登録:猫カフェ、ドッグカフェなどの営業スタイルにする場合
- 菓子製造業営業許可:ケーキ類のテイクアウトを行う場合
- 深夜における酒類提供飲食店営業開始届:バー、居酒屋、スナック等で深夜0時以降に営業をする場合
- バリアフリー条例:規制の厳しい自治体において一定規模の面積を有する場合
これらの申請手続も合わせて行政書士に依頼することができます。
飲食店営業許可申請を行政書士に頼むタイミング
飲食店営業許可申請手続を行政書士に依頼する場合、どのタイミングで頼めばいいのでしょうか。工事に着手する前がいいのか、それとも許可申請直前でもいいのか迷うところです。飲食店をやる目的で店を探していて理想の物件が見つかったのなら、その段階ですぐに行政書士に依頼するのがベストです。
お店が決まればただちに内装や店の配置を決めていきますが、この際に飲食店営業許可の基準を無視して進めて、基準に適合しない流し台や食器棚を設置すると取り返しのつかないことになります。基準に合わない限りどんなに頑張っても飲食店営業許可は取得できません。そのため店の内装や配置を決める段階から飲食店営業許可申請手続に精通した行政書士に参加してもらった方が、作業の手戻りが少なくてすみます。
まとめ
いかがでしたでしょうか?上記でお知らせした通り、飲食店の営業許可申請は行政書士に依頼することができます。だいたい費用の相場は2-4万円になります。
すべての手続きを自分でやることも可能性ですが、書類の不備などで何度も保健所に行くことになってしまいます。そうした時間を削減することで、新規出店の他の業務に集中できるというメリットがありますので、飲食店を開業する際の許可申請は行政書士に依頼することをおススメします。