検討したい経営スタイル「二毛作ビジネス」について解説
飲食店の稼働や利益を最大化できる「二毛作ビジネス」が飲食業界に浸透してきています。
二毛作ビジネスは、昼はカフェを経営し、夜はバーになるといった、それぞれの時間帯でターゲットを変えて行うビジネスですが、店舗を無駄なく回転させることができるのは魅力的です。しかし、一方で安易に手を出して失敗する事例も多いです。
そこで今回は、「二毛作ビジネス」について解説していきます。
そもそも二毛作とは?
二毛作とは、同じ田んぼや畑で1年に2回別の作物を作る農業のスタイルのことです。例えば、春にジャガイモを植えて夏に収穫した畑に、秋になったらほうれん草の種をまくなど、風土に合った作物を組み合わせます。作物同士の相性も考えて作付けすれば、土地の広さは変わらないのに収入の増加が見込める、昔ながらの農法です。
農業で用いられている二毛作を店舗に置き換えた二毛作ビジネスは、一つの店舗で異なる二つの業種を昼夜など時間を使い分けて運営することです。稼働しない時間を活用することで、ターゲット層やニーズの拡大に役立てることができます。売上収益の増加が見込めるため、近年、二毛作ビジネスを行う店舗が増えてきています
飲食店における二毛作ビジネス
どのような業種でも時間帯や曜日によって客層が変化するのは当たり前ですが、飲食店ではその傾向がひときわ大きいです。
例えば夜間営業だけの居酒屋にとって営業時間の短縮は痛手ですし、夜のイメージを引きずりながらランチ営業をしても、人件費や光熱費が出ていくだけで、思ったより利益につながらないということも多いのではないでしょうか。それであれば、昼間はファミリー層をターゲットにした店に思い切ってシフトしてみるというのが二毛作。居酒屋とハンバーク専門店の両立で成功した事例も見られます。
一方、テイクアウトの需要は高まっているので、実店舗を解約して「間借り」でテイクアウト専門に鞍替えしたり、閉店している時間を利用してテイクアウト専門店を「間借り」させたりすることも一案です。貸す側、借りる側もお互いWin-Winな関係を築くことができるでしょう。
- 昼はオフィス、夜はカフェバー
- 昼はカフェ、夜は居酒屋
- 昼は料理教室、夜はレストラン
- 営業日は高級鮨店、定休日はリーズナブルな鮨店
- 日替わり店長(カジュアルフレンチレストラン、和食店、ブックカフェなど)
二毛作ビジネスのメリット・デメリット
以下、二毛作ビジネスのメリット・デメリットをご紹介します。
二毛作ビジネスのメリット
- 閉店中の時間を有効に活用でき、売上額が上がる
- 食材の回転率が上がり、食材ロスの減少につながる
- 顧客の口コミが増加する
- 新しいアピールポイントを創出できる
メリットとして1番に挙げられるのは、やはり売上額の増加です。各時間帯のニーズを捉え、店舗をフルに回転できれば売上は伸びます。もし労働時間や人手不足で他の時間帯の営業が難しいようであれば、閉店時間中の店舗を、シェアリングサービスで貸し出して利益を上げる方法もあります。オーナーは同じく飲食店をオープンしたい別のオーナーへ、閉店時間中だけ店舗を貸し出し、収益を得る。借主は新しく店舗を用意するよりも低リスクで経営をスタートできるため、近年、スペースシェアリングとして広まってきています。また、2つの業態の組み合わせに意外性があれば注目度が上がり、顧客に店を知ってもらえる可能性は高くなるため、ファンの増加が期待できるのもメリットです。
二毛作ビジネスのデメリット
- 共倒れのリスクが高まる
- すべてのビジネスに関わる場合は、長時間労働になる可能性がある
- 店舗のイメージがぼやけて、ブランディングに失敗しやすい
- シェアリングを行う場合、トラブルが起きるおそれがある
オーナーが複数の形態に関わる場合、経理や仕込みなどの作業を含めると、どうしても長時間労働となってしまいます。任せられる従業員を育てたり、または店舗をシェアしたりと、すべてを自分でやろうとしないことが重要です。また、間借り営業など同一店舗で経営母体の違う業務を行うとなると、内装や備品、食材の取り扱いでトラブルが起きる可能性が出てきます。
二毛作ビジネスを成功させるコツ
ここからは、二毛作ビジネスを成功させるコツをご紹介します。
需要の見込みがあるかどうか
需要の見込みがあるかどうかをリサーチしておくことも大切です。同じ飲食店であっても、時間帯や曜日によってお客様のニーズが異なるため、どういったお客様をターゲットにするのかを明確にしておきましょう。
どちらの業務も手を抜かない
二毛作ビジネスで避けたいのが「片手間でやっている」というイメージを持たれてしまうことです。中途半端な店だという印象がつけば、本業までもが傾きかねません。二毛作ビジネスではどちらの経営にも真剣に取り組み、「究めようとする本気の姿勢」をアピールすることが成功の秘訣と言えます。
追加コストを極力抑える
利益率が高いビジネスであっても、追加コストを極力抑えることも欠かせない点です。二毛作ビジネスを行うにあたって、設備投資が必要なケースもあります。ただ、莫大な初期投資がかかると、利益を食い潰してしまう可能性も考えられます。できるだけ既存の設備をうまく活用し、追加で必要となるコストを最小限に抑えられるビジネスを選びましょう。また、共通の仕入れ食材を利用してコストを下げるために、メニュー作成や在庫管理、発注管理を徹底することも大切です。
昼の顔と夜の顔を演出
昼と夜の線引きがあいまいなのもNGです。昼と夜は、まったく違う顔をもたせて、それぞれの顧客をつかみましょう。「スイーツ専門店」と「北欧料理」、「コーヒー専門店」と「ショット・バー」など、コンセプトの違いをきっちりと打ち出すことが効果的です。それと同時に、店頭に置く看板、入口の暖簾、店内のインテリアや照明などもきっちり変えて、メリハリをつけましょう。
既存のスタッフでも対応可能かどうか
人件費もコストの面で重要なポイントといえます。なるべくなら、人員を増やさずに既存のスタッフでも対応可能な仕組みをつくると良いでしょう。たとえば、人件費を抑えて回転率を上げるために、自動券売機を導入するのも良いでしょう。また、POSレジの導入や、クレジットカード決済でキャッシュレス店舗にすることで、少ない人員でも効率よく運営できます。
まとめ
二毛作ビジネスはリスクを伴う可能性がありますが、うまく経営していくことができれば、利益がアップし、異なる客層の集客にもつながります。飲食店の新しい経営方法を探している場合、二毛作ビジネスの可能性を選択肢の一つに加えてみてはいかがでしょうか。