損益計算書とは?飲食店の損益計算書の分類や注目すべき数字について解説
飲食店の経営状態を測るための指標は様々とあるが、なかでも重要とされているのが「PL」です。PLはProfit and Loss statementの略称であり、損益計算書と呼ばれています。
損益計算書について端的に言うと、お店がどれだけ儲かっているかがわかるものです。自分の理想とするお店作りや料理、客を満足させる接客ができても、儲けがでなければお店は存続できません。
そこで今回は、飲食店経営のための「損益計算書」の分類や注目すべき数字について解説していきます。
そもそも損益計算書とは?
損益計算書とは、企業の収益や費用、利益を表す財務諸表のうちのひとつです。「収益-費用=利益」の内訳を明確にするものなので、経営をうまく行っていく上で非常に重要なものとなります。
具体的には、お客さんの支払った金額に対する「原材料費」「人件費」「その他経費」がどのくらいなのかなどをわかりやすい表にしたものだと捉えていただければいいでしょう。
損益計算書の知識が大切な理由
損益計算書の知識は経営をしていく上で必須なものです。どのような内訳で当期純利益になっているのかを把握することで、課題となる要素を一目で判断することができます。この課題を洗い出す作業では、固定費用と変動費用でそれぞれの損益計算書を作ることで、赤字になる売り上げのラインなどがわかるようになるなど、工夫ができます。
このように、ただ項目を埋めて作るのではなく、何を意味するのかを明確にすることが上手な経営の助けになるのです。
損益計算書(PL)の分類(項目)について
損益計算書(PL)の科目を大きく分類すると、「売上」「原価」「経費」「利益」の4つがあげられます。
もう少し細分化すると下記になりますが、諸経費や初期条件費用については、更に細分化して損益計算書(PL)を出すケースがあります。
- ①売上高(お店の全体売上げ)
- ②原価(売上を獲得するために使った食材・飲料費など)
- ③人件費(お店の人に関する費用)
- ④諸経費(光熱費、通信費、専門家費用、消耗品(雑品)、交通・交際費、販売促進費、広告宣伝費など)
- ⑤初期条件費用(地代・家賃、支払い金利、 減価償却費、リース料など)
売上純利益 (売上高①-原価②)
営業利益(売上げ純利益-(販売管理費③~⑤合計))
売上から原価を引いたものを売上総利益または粗利といいます。人件費や諸経費、初期条件費用を販売管理費、略して販管費といい、売上総利益から販管費を引いたものを営業利益といいます。
損益計算書(PL)において注目すべき数字とは?
まず、注目すべきは売上に対して原価の占める割合です。この「原価÷売上」を原価率といいます。原価率は一般的に飲食業で平均すれば30%程度といわれていますが、同じ飲食業でも業態やビジネスモデルによって変わってきます。
次に注目すべきは、社員やアルバイト・パートの給料である人件費です。「人件費÷売上」を人件費率といいます。飲食業ではFLコストと呼ばれています。FLコストは「原価+人件費」のことで、このFLコストが売上の55%~60%以内におさまると、利益が出ると言われています。飲食店の場合の、収入に占める支出で大きな%を占めるFLコストを管理することが、利益の確保に大変重要になります。
販売管理費には、人件費以外にも賃料や光熱費・広告費などがあります。まず、賃料のコントロールは難しいですが、利益を出しやすくするためには、「初期条件費用」をできるだけ低く設定する必要があります。出来れば売上の20%以内にしたいところです。
飲食店経営にあたり、まずは原価と人件費を管理することを意識しながら、抑えられる費用は抑えていくことを考えましょう。
売上想定を出しましょう「売上の算出方法」について
損益計算書(PL)の分類である売上を算出する際、用いられるのが、「客単価」「席数」「稼働率」「回転率」の4種類となります。
「客単価」:お客さん1人あたりのお支払金額
「席数」:店内の合計の席数(スタンディングの場合はテーブルの前に立てる人数)
「稼働率」:1卓あたりの平均的な着座数
例えば4人席に3人座った場合、稼働率は75%になります。
「回転率」:1座席あたり、座った客数
例えば30席ある店内で1日にお客さんが90人来た場合は「300%」となります。
上記を元に売上は次のように算出できます。
売上=席数×稼働率×回転率×客単価
例えば、客単価が1,000円、席数25、稼働率75%、回転数1の場合、1日の売上高が¥18,750になります。当然ですが、ランチタイム、ディナータイムといったような営業の仕方をする場合はそれぞれの客単価、客席稼働率、回転数で、昼と夜を別々に計算し、昼と夜を足して一日の売上高を出します。
単純に売上目標〇〇円と考えるのではなく、前述のように綿密に算出しましょう。
飲食店の損益計算書を作成する方法
損益計算書を作成する方法は、エクセルを使用する方法と会計ソフトを使用する方法の2つがあります。
エクセルを使用する方法
エクセルで損益計算書を作成するには、簿記の知識が多少必要になります。まず、飲食店の資金が動くたびに、仕訳という形式で1つひとつの取引を入力しなければいけません。特に飲食店では、ほぼ毎日売上があるため、毎日エクセルに入力することになります。ただ、まとめて週単位や月単位で入力しても問題ありません。次に、月単位で入力が終わったら、科目別に集計することで損益計算書を作成することができます。
会計ソフトを使用する方法
会計ソフトを使用すれば、ネット上のデータを自動で仕訳にすることが可能です。さらに、仕訳データから自動集計で損益計算書を作成することが可能です。ただし、現金取引は基本的にデータにならず仕訳になりませんが、POSレジを導入していれば自動仕訳が可能になります。
まとめ
お金の管理は経営をしていく上で最も重要なことの一つです。まだまだ会計関連で覚えた方が良いことはたくさんあります。この損益計算書をきっかけに、きちんと覚えてお店を繁盛させましょう。
損益計算書は初歩的な内容ですが、使いこなせないとお店の弱点を見逃してしまい、お店の経営をしながらだと分析する余裕がないなどの落とし穴があります。自分自身で作成することも大切ですが、それでも面倒だと感じた方は、税理士などのプロに任せるのも選択肢の1つでしょう。