飲食店における聴覚障害者のお客様への接客や対応について解説
飲食店には、松葉杖を使用している方や、視覚障害の方、聴覚障害の方など、何かしら障害を持ったお客さまもいらっしゃいます。聴覚障害をお持ちのお客様が店舗に来店した時に店舗側でお迎えする準備ができていないと、思わぬ事故につながる可能性があります。事故を未然に防ぎ、聴覚障害をお持ちのお客様が来店しやすく、心地良く過ごせるような店舗にするにはどうしたら良いのでしょうか。
今回は、飲食店における聴覚障害者のお客様への接客や対応について解説していきます。
聴覚障害とは?
聴覚障害とは、音や声が聞こえないまたは聞こえにくいなどといった、聴覚に障害があることです。生まれつき耳が不自由な方や、事故または病気で聴覚に障害を生じた方など、人によって状況はさまざま。聞こえの程度にも、個人差があります。全く聞こえないという方もいれば、補聴器をつけることで少しは聞き取れる方もいらっしゃいます。
障害者を入店拒否することは法律に抵触する?
障害者であることを理由に、入店拒否等をすることは障害者差別禁止法に抵触する可能性があります。障害者差別解消法は、障害を理由とする差別を禁止する具体的な対策を定めた法律です。正式名称を「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」といい、2013年6月に成立し、2016年4月1日に施行されました。
この法律は障害を理由とする差別を禁止する対策を定めています。差別解消のための措置として「不当な差別的取扱いの禁止」と「合理的配慮の提供」の2つを定め、それらを実施する際の支援措置も規定しています。
聴覚障害者の方を示す「耳マーク」について
聴覚障害者の方のなかには普通に話すことができる方もいるため、外見から聴覚障害者の方であることが判断できない場合もあります。そこで、聴覚障害者の方を示す「耳マーク」というマークが普及しています。聴覚障害をお持ちの方の多くが、耳マークが入ったバッジや札をつけているため、耳マークでの判断も可能です。
参考:耳マーク( 一般社団法人全日本難聴者・中途失聴者団体連合会)
聴覚障害者の方に対するコミュニケーション(伝達)方法
聴覚障害をお持ちの方は、声でのコミュニケーションが困難です。大声で話しても聞こえない方もいらっしゃいます。ここでは、聴覚に障害を持った方との適切なコミュニケーション(伝達)方法をお教えします。
手話
手や指、体などを利用して具体的に表現し会話することを手話といいます。手話には、もともと聴覚障害を持った方たちが使っていた「日本手話」と、日本語の文法・語順に合わせた「日本語対応手話」の2種類があります。日本手話は、一般的な日本語の文法・語順と異なるため、現在は日本語対応手話を使う方が増えてきています。手話は、本やテレビ、インターネットなどで気軽に学ぶことができますし、地域のボランティアサークルなどで習うことも可能です。
筆談
手話が出来るスタッフがいない場合は、筆談が1番確実に間違いないコミュニケーションの方法になります。筆談とは、紙とペンなどを使って文字でコミュニケーションを取る方法です。
書くことで、確実に情報を伝えることができます。飲食店であれば、注文内容を筆談でやりとりすると、注文間違いを防ぐことが可能です。筆談は特別なスキルが不要なので、誰でも簡単に取り入れられます。ただし文字を書くのに時間がかかるため、文章は簡潔にまとめる必要があります。
空書
指を使い、空中や手のひらに文字を書いて伝える方法です。空書(くうしょ)のほか、空書き、空文字と表記されることもあります。ポイントは伝わりやすく大きく文字を書くことです。こちらもスキルが不要のため、取り入れやすい方法です。
口話
口話(こうわ)とは、話し手の口や舌の動き、表情から話の内容を理解してもらう方法です。口の動きが分かるようにはっきりとしゃべり、早口やスローになりすぎないように話します。また、1音ずつ区切るのではなく文節で軽く区切る方が分かりやすいでしょう。口話を利用する際は、マスクを外すなどして口元が見えるように配慮する必要があります。
聴覚障害者の接客で準備しておきたいもの
聴覚障害をお持ちのお客様が来店することを考えて、準備しておきたいものはいくつかあります。
持ち運びできる小さなホワイトボード
持ち運びが出来る小さなホワイトかブラックボードがあると、とても便利です。メモ帳やノートとは別に、ホワイトボードがある方が便利なのには理由があります。それは、ホワイトボードの方が大きな字を書くことが出来るという利点があるからです。そして、マジックを使いますから、文字が見やすいのです。聴覚障害者の方が、大人数でご来店された場合などはひとりひとりと順番に筆談でお話ししていては時間がかかってしまい、料理の提供が遅れてしまうこともあります。迅速に正確にコミュニケーションを取るために、大きな字でわかりやすく表記できるホワイトボードはひとつあるととても便利です。
ボールペンやメモ帳等の筆記用具
ホールスタッフは全員、ポケットにメモ帳とボールペンを携帯しておきましょう。メモ帳は、聴覚障害者の方とのコミュニケーション以外にも様々な使い道がありますし、すべてのスタッフがすべてのお客様に対応できるようにしておくのは大切なことです。
写真付きのメニュー表
メニューの写真が載っているメニュー表を用意しておきましょう。どのようなメニューなのか、どれくらいの量があるのかを視覚で把握できるようにしてあげると、筆談でたくさんの会話をする手間も省けるため、お客様がメニューをスムーズに選ぶことができます。
まとめ
いかがでしたでしょうか?今回は、飲食店における聴覚障害者のお客様への接客や対応について解説しました。
聴覚障害者のお客様への対応は、手話が出来るスタッフがいない場合は、筆談がメインとなります。手話が出来るスタッフがいれば、それに越したことはありませんが、なかなかそうも行かないのが現実です。筆談やメニューの指差してを最大限に活用すれば、問題なくコミュニケーションを取ることが出来ます。しっかりと笑顔で接客するように心がけましょう。心がけが出来れば、利用者やリピーターが増えるでしょう。