飲食店のアレルギー対策について
昨今、訪日外国人観光客の増加や、食物アレルギーがある子どもが増えたことなどを理由に、アレルギー食品の表示をする飲食店が増えてきました。
今回の記事では、アレルギー食品とされる28品目にどのようなものがあるかを紹介します。そして飲食店として、どのような対策をしていくべきかを解説していきます。
食物アレルギーとは?
食物アレルギーとは、特定の食べ物に含まれるアレルギー物質(アレルゲン)に免疫機能が過剰に反応して様々な症状が引き起こされる疾患です。アレルゲンを含む食品は多岐にわたりますが、その70%は鶏卵、牛乳、小麦が占めています。特に低年齢ほど鶏卵、牛乳、小麦がアレルゲンになることが多く、年齢が上がるにつれて、甲殻類や果物が増えていきます。
そして発症経路は「食べる」だけではありません。「吸う」「触る」でも発症する場合があり、また、症状も、身体の一部にだけ現れる場合もあれば、全身に複数の症状があらわれることもあります。中でも「アナフィラキシーショック」は血圧の低下や意識障害が伴い命の危険にまで及ぶことすらあります。
- 皮膚症状:かゆみ、じんましん、むくみなど
- 粘膜症状:目の充血や涙、くしゃみ、鼻水、鼻づまり、口の違和感など
- 呼吸器症状:のどが締め付けられる感じ、声がれ、咳、息苦しさなど
- 消化器症状:腹痛、吐き気、嘔吐、下痢など
- 全身症状:アナフィラキシー、アナフィラキシーショック
飲食店にアレルギー表示義務はない!?
最近、多く飲食店でメニューにアレルギー表示をしているお店を見かけますが、実は飲食店に食品表示義務はありません。店頭での販売品や外食料理には、アレルギー物質の表示は義務づけられていないため、表示に関してはお店の自主的な対応となります。
しかし、アレルギーに関するトラブルは実際にあるものです。そういったトラブルを回避するためにも、メニュー表示や口頭説明などの対策をしましょう。
表示義務・推奨の28品目(容器包装加工食品の場合)
容器包装加工食品を対象とした食品表示法のアレルギー表示では、義務表示である「特定原材料」に7品目、推奨表示である「特定原材料に準ずるもの」に21品目の計28品目を指定しています。
2019年9月に特定原材料に準ずるものに「アーモンド」が追加されました。また、「くるみ」は現在、特定原材料に準ずるものですが、義務表示の特定原材料への移行が検討されています。移行した場合は義務表示品目となるため今後の動向に注目です。
- えび、かに、小麦、そば、卵、乳、落花生(ピーナッツ)
- アーモンド、あわび、いか、いくら、オレンジ、カシューナッツ、キウイフルーツ、牛肉、くるみ、ごま、さけ、さば、大豆、鶏肉、バナナ、豚肉、まつたけ、もも、やまいも、りんご、ゼラチン
ルールを決めてしっかり伝える事が大切
日本には1~2%程度、差はあれど、絶対に食べてはいけない食品を抱えている人がいます。アレルゲンを食べた場合、食べた直後から数時間で蕁麻疹やかゆみなどを発症する事や、呼吸困難や意識を失うなどの重篤な状態に陥る事があるのです。すべての場合で飲食店に責任があるわけではありませんし、アレルギー表示の義務があるわけではありません。ただし、お客さんに求められた場合の対応は決めておくべき事項です。お客さんがアレルギー食品を伝えてきた場合には、以下のルールを決めましょう。
- アレルギー内容を確認する
- どの程度の混入まで許されるのか
- 飲食店としてできる事をお客さんに伝える
- 調理する場合、絶対に料理が通常のメニューと混同しないように調理する
アレルギーは1つだけなのか、ほかにも注すべき食材はあるのか
スープ、揚げ油、だし、エキス等微量の混入(コンタミネーション)も危険があるのか。また場合によっては、飲食店としてどこまでの調理変更対応ができるのか。
メニューの内容を変えるなど。
一人のお客さんにここまでの確認を行い、なおかつそのお客さんが微量の混入も危険なほどのアレルギーを持っていた場合、あいまいな料理提供をするのであればいっそのことできませんと断る事も飲食店の選択肢だと考えます。微量混入は避けられないがアレルギー食品を抜くことはできる等のラインがあると思います。
そしてしっかり伝える事が大切になってきます。飲食店では、病院のような厳格な対応をしたアレルギー対応をすることはほぼ不可能です。食材を切ったまな板や包丁、鍋を確実に洗浄し調理をし直す必要があるためです。しかし、お客さんからすると、せっかくこのお店の料理を楽しみに来店してアレルギー対応はできませんといわれるのはあまりに残念です。飲食店として安全な料理提供をするためにはお客さんに寄り添って何がどの程度危険なのか、うちの店は食品を抜くことはできるが微量混入の可能性もあるなど、できるだけの対応はしていく姿勢を示すことが双方にとって一番理想的ではないでしょうか。親身になってお客さんのアレルギーを聞き、調理担当に確実に連携する事がポイントでしょう。
また、アレルゲンとして特定原材料をメニュー等に表示する際は、あいまいな表示はしないようにしてください。アレルギーを持つお客さんは特定原材料の表示を頼りにしています。確かに表示をすることは双方の安心につながりますが、調理場で食材が混在している可能性も鑑みたうえで責任を持った表示をすべきです。
まとめ
アレルギーがある人にとっては、飲食店での外食はハードルが高いと感じることもあります。逆をいえば、しっかりとアレルギー対策がされている店であれば、何度も通ったり、人におすすめしてくれたりする上客になる可能性もあります。アレルギー対策で他店との差別化を考える飲食店は、ぜひ参考にしてみてください。