自宅で飲食店を開業する場合のメリット・デメリットや注意点を解説
自宅の空いているスペースで飲食店を開業してみたいと一度は考えたことがある人はいるかと思います。たしかにいきなり店舗を持つのは、失敗した際コストの面であまりにもリスクが大きいですし、自宅で飲食店をできるスペースがあればいい場合があります。
今回は、自宅で飲食店を開業する場合のメリット・デメリットや注意点などについて解説しています。
自宅で飲食店を開業するメリット・デメリット
自宅で飲食店を開業するメリット
自宅で飲食店を開業するメリットは主に以下になります。
低リスク・低コストで始められる
自宅での飲食店の最大のメリットは、失敗した時のリスクが少ないという点です。 例えば、店舗を一から改装して飲食店を開くと、物件取得費として80万〜300万程度、開業資金として500万〜1,000万円程度の費用がかかります。 また、新たに水道やガス等の設備工事が必要なことが多いので、改装費も高額になりやすい傾向にあります。自宅飲食店の場合、テナント料は従来の家賃だけで済みます。改装費も抑えられ、低コストで始めることができます。
店舗をもつ足がかりになる
将来的には、実店舗を持ちたいという方には、自宅を練習台として活用するという考え方もできます。 飲食店を経営するノウハウ、メニューの考え方、多くの方に認知してもらうマーケティングなど、まずは小さな段階からステップアップすることは重要です。もし自宅での飲食店がうまくいけば、そこで貯めた売り上げとノウハウで、実店舗を開業できる可能性もあります。
副業としてできる
本職は会社員だけれども、ゆくゆくは会社をやめて自分の店舗を持ちたいという方にも、自宅での飲食店には向いています。週末はセミナーに参加したり、料理の研究に励んでいるという方も多いことでしょう。平日は働いているため営業できない方は、週末だけオープンしてみるなど、自分の空いている時間に営業できます。
通勤時間不要
開店から閉店まで店舗にいる場合、なかなか時間がとれずやりたいことの半分もできなかったり、休日を返上して働くこともあります。しかし、自宅が職場なら通勤時間はゼロです。休憩中は自宅に戻って作業もできるので、1日を有効に利用することができます。
自宅で飲食店を開業するデメリット
害虫や騒音に気を遣わなくてはいけない
飲食店を営業すると害虫が集まりやすくなります。きちんと駆除をしないと近隣の住民から苦情がきてしまいますし、不衛生という噂が広まってしまうと客足に響きます。さらに住宅街では、店舗が目立ちにくいというデメリットがあります。看板を設置していても、見た目が住宅なので素通りされない工夫をすることが重要です。
その他に、駐車場が用意しにくいという問題もあります。都市部では広い土地の確保が難しく、土地がなければ駐車場を設置できません。何とか確保できたとしても、営業時間が遅いときは車のエンジン音などに注意が必要です。
プライベートとの区別がつきにくい
自宅が職場ですので、プライベートと仕事の境目が曖昧になるのもデメリットのひとつです。1人暮らしではなく家族がいる場合、店舗兼住宅では家族にも負担をかけてしまいます。また、仕事で追い込まれたときに逃げる場所がないのは、精神的につらいものがあります。
住宅街で営業する際は、これまではただのご近所さんだった人たちが、今度はお客さんになると思うと色々と気を遣いますよね。そういうことが今後ストレスになるかもしれません。
立地によっては集客に影響がでる
これから土地の取得をするのであれば、集客も考えて場所を選ぶことができます。できれば人通りが多いところで開業するのが理想ですが、駅前などでは土地の値段が高額です。逆に土地が安い場所は、人の流れがほとんどない辺鄙なところが多いため、集客に苦労する可能性があります。
すでに持っている家を店舗にリフォームするときは場所を選べません。住宅地にあるのでしたら近所の方たちの利用を期待できますが、業種によってはお客さんにならないこともあります。
自宅を飲食店にできる物件とは?
まず考えるべきは、自宅が飲食店を開業するのに適しているかということです。実は、自宅内で飲食業を営むことは本来は違法行為です。 飲食店としての営業許可が得られるためには、住居部分と店舗部分が明確に仕切られている間取りにする必要があります。まずは、自宅の種類ごとに確認していきましょう。
マンションの場合
飲食店の開業を考えている方で、マンションに住んでいる方もいらっしゃると思います。 マンションの場合は、飲食店の内装工事をする以前に営業利用不可のところがあります。営業利用が可能でも、改装工事やリフォームをする前にマンションの管理規約を確認し、管理会社に必ず相談しておきましょう。 飲食店の経営にはキッチンなどの水周り設備が必須です。 2階以上では水まわり設備を増設すると、工事費が高くなるといわれています。
一戸建ての場合
戸建ての場合は、飲食店ペースと住居スペースの分ける間取りが異なります。 間取りの方法は、「上下分離型」、「縦割り型」の2種類があります。
上下分離型とは、1階と2階で自宅と飲食店スペースを完全に分ける間取りです。 1階が飲食店で、2階を自宅というときは、足音や生活音が1階の飲食店に響かないように注意するか、防音対策をしましょう。また、内装だけでなく2階のベランダに洗濯物が干してあると、生活感がでてしまってお店に入りづらいお客様もいるかもしれません。飲食店と自宅の入口も同じため、改装する必要もあります。
縦割り型とは、飲食店スペースと住宅スペースを、建物の奥側と入り口側で分離する間取りです。 例えば、道に面した部分を飲食店スペースにし、奥側を自宅として分けるとします。 この場合、それぞれに入り口が必要になるだけでなく、分離部分の柱、壁を作らなければならないので、改装工事は大規模になりやすい構造です。費用がかかってしまうデメリットはありますが、上下分離型のように天井から足音などが響くことがなくなるため、生活感を見せることがない構造といえます。
改装工事は必須なのか?
自宅で飲食店を開くときは、リフォームが必須です。場所や経営方針により多少異なりますが、内装の改装を行わない場合でも、飲食業を始めるには様々な規定が設けられているため、自宅のキッチンと店舗の厨房は分けることになります。普通のご自宅を改装せずに飲食店として利用することはできません。 お店のイメージを具体化し、どういう工事をしなければいけないのか、施工業者と相談しつつリフォーム計画を立てましょう。
自宅での飲食店開業前に確認するべき項目
自宅での飲食店を営業する上で確認しておくべきことがいくつかあります。
食品衛生法の基準を満たしているか
食品衛生法には、建物の構造に関する共通基準というものががあります。 飲食店を開業するには、この基準を満たさなくてはいけません。 基準には以下のようなものがあります。
- 住居やその他に営業と関係ない場所を間仕切りなどで区切ること
- 内壁は明るい色使いで、床から1mの高さまでは耐水性の素材を使用し、掃除しやすい構造であること
- 十分に換気が行われる構造であると共に、強制換気ができる装置を設けること
- 従業員が手や指を消毒することができる、流水式の手洗い設備の設けること、など
上記の条件を満たさなければ営業許可を受けることができません。そのため内装工事は、店舗の施工経験がある業者に相談するがおすすめです。複数の会社から見積もりを出して検討すると、異様に金額が高い施工業者に依頼するということがなくなります。
店舗を営業していい場所か
開業を決める前に、まずは自宅で店舗を開ける地域かどうかについて、確認する必要があります。行政面では、事前に「用途地域」の確認をする必要があります。用途地域とは、建てられる建物の種類、用途の制限を定めた基準のことで、「商業系」「工業系」「住宅系」などの用途でエリアを制限することで、秩序ある街並み作りに役立っています。
例えば、お住いの地域が第1種低層住居専用地域に該当すると、小・中学校や診療所などは建築可能ですが、店舗や飲食店は建てられないので注意が必要です。加えて、周辺環境にも気を遣う必要があります。飲食店を開業するということは、その地域に住んでいる以外の人を呼び込むことになります。防犯意識が強い地域では、クレームの原因にもなりかねませんので、十分な配慮と理解が必要でしょう。
利益は見込めそうか
自宅での飲食店も、立派なビジネスです。利益が出ないと経営を続けることは難しくなりますし、将来実店舗を持つことを考えているなら致命的です。また、人通りが少ない場所では、立て看板の設置やSNSでの拡散、ブログのこまめな更新で認知度をあげることも、考えなければなりません。
まとめ
いかがでしたでしょうか?自宅での飲食店開業は通常の店舗と比べ安価にできるなど様々なメリットがありますが、飲食店を開業できる場所(用途地域)というものが、法律で決まっているので、自宅が対象かどうかを確認する必要があったり、食品衛生法の「施設基準」をクリアしないといけないなど注意点も多々ありますので、開業検討段階で早めに専門家に相談しておくといいでしょう。