飲食店で従業員を雇う場合に必要な『労働保険』について解説
飲食店では従業員を一人でも雇うと労働保険などの加入義務が発生し、書類の提出など諸手続きを行う必要が出てきます。ではどのタイミングでどのような書類を提出するべきでしょうか?
今回は、飲食店で従業員を雇う場合に必要な『労働保険』について解説していきます。
そもそも労働保険とは?
労働保険とは、労災保険(労働者災害補償保険)と雇用保険を合わせた総称です。業務や通勤が原因となるケガや病気、休業や失業時の収入を保証するもので、労働者の生活と雇用を守るために作られました。
- 労災保険(労働災害補償保険):労働災害によるケガや病気の治療費と収入を保証するもの
- 雇用保険:育児や介護などによる休業や失業時の収入を保証するもの
労災保険の目的は、業務上のケガや病気で働けなくなった労働者の生活を守り、療養費や収入を補償することです。労働者が死亡した際は、給付金により遺族の生活を支援します。正社員やアルバイト、パートなどの雇用形態を問わず、従業員を1人でも雇っている事業所は、原則として労災保険に加入しなければなりません。また、労災保険の保険料はすべて事業所が負担します。
労災保険について
上記で労働保険には「労災保険」と「雇用保険」があることをお伝えしましたが、ここでは労災保険の役割や対象、手続きについて詳しくお知らせします。
労災保険の役割
従業員を就業中のケガや病気から守ることにあります。たとえば、料理をしているときに、包丁で指先を切ってしまったり、ヤケドをしてしまったりすることがありますが、労災保険はそういうときの治療費を全額支給してくれます。また通勤中のケガも労災の対象です。出勤途中に交通事故にあい働けなくなった場合や、障害が残った場合、不幸にも死亡してしまった場合、国から休業保障や給付金が出ます。なお、保険料は全額事業主負担です。
労災保険の対象者
すべての従業員(アルバイトやパートなどの雇用形態は問わない)
労災保険の具体的な手続き
労働者を一人でも雇ったときは、10日以内に「保険関係成立届」を提出します。また、50日以内に「労働保険概算保険料申告書」を届け出ます。いずれも、お店の所在地を管轄する労働基準監督署が提出先です。
雇用保険について
次に雇用保険の役割や対象、手続きについて詳しくお知らせします。
雇用保険の役割
被保険者の雇用の安定や、再就職の促進を目的としている公的な保険制度です。従業員が離職したときに「基本手当(失業給付)」を支給し、再就職までの経済的なサポートを行います。他にも、従業員が教育訓練を受けるための費用を援助する「教育訓練給付」や、育児休業期間中に給付を支給する「育児休業給付」などがあります。事業主に対しても、さまざまな助成金や給付金の支給を行っています。保険料は従業員と授業主の折半負担です。
雇用保険の対象者
以下の要件を満たした人を雇い入れた場合、雇用保険に加入しなければなりません。
- 1週間の所定労働時間が20時間以上
- 31日以上継続して雇用される見込みがある
この2つの条件を同時に満たしている場合、アルバイトやパートであっても雇用保険の対象者になります。ただし、昼間学生の場合は保険に加入する必要はありません。
雇用保険の具体的な手続き
雇用関係が成立した日が属する月の翌月10日までに、公共職業安定所(ハローワーク)に「雇用保険適用事業所設置届」「雇用保険被保険者資格取得届」を提出します。従業員が以前にも働いていた場合は、「雇用保険被保険者証」による被保険者番号の確認も必要になります。
まとめ
いかがでしたでしょうか?今回は、飲食店で従業員を雇う場合に必要な『労働保険』について解説しました。
従業員を雇っている事業所は、労働保険に必ず加入しなければなりません。パートやアルバイト、派遣労働者などを新たに雇い入れたときは、雇用保険加入要件に満たす場合には手続きを忘れないようにしましょう。