店舗を持たない飲食店とは?店舗を持たない飲食店のメリット・デメリットについて解説
現在、新型コロナウイルスの影響もあり、店舗を持たない飲食店が注目を集めています。顧客のニーズや季節、流行によってメニューや販売形態を変えられるため、よりフレキシブルな店舗経営が可能になります。
そこで今回は、店舗を持たない飲食店についてやメリット・デメリットを解説していきます。
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店舗を持たない飲食店とは?
店舗を持たない飲食店とは、言葉の通り、店舗以外の場所で飲食物を販売する営業方法を行う飲食サービス事業者のことです。自宅やシェアオフィスなどの店舗以外の場所で調理し、料理配送サービスで配達してもらう手法や、キッチンカー(フードトラック)での移動販売といった店舗にあたる車両を利用する方法が代表的です。
店舗を持たない飲食店を開業する場合、通常の店舗営業と同じような営業方法は通用しない点に注意が必要です。店舗の前をふらっと通りかかり入ってもらうというようなことが期待できないため、サービスを多くの人に知ってもらう努力をしなくてはいけません。例えば、見栄えのよい商品写真をInstagramにアップするなど、SNSで積極的に情報発信する必要があります。
店舗を持たない飲食店のメリット
ここからは、店舗を持たない飲食店のメリットについてご紹介します。
初期費用をおさえやすくスモールスタートに向いている
店舗を持たない飲食店は、当然ながら店舗を用意する必要がありません。内装工事費や店舗装飾などの店舗設置費用や店舗維持費が浮くため、比較的、初期費用をおさえやすいと言えるでしょう。店舗を持たない飲食店は、小さく事業をはじめる「スモールスタート」に向いている業態です。
ランニングコストも抑えられる
事業の規模にもよりますが、客席スペースがなくテーブルや椅子、空調設備が不要なので、掃除やメンテナンス費用、電気代なども店舗よりは安くできることが期待できます。調理スペースさえあればよいなら、家賃も低く抑えることができるでしょう。人件費に関しても、最低限の人数の接客スタッフ、あるいは調理スタッフだけを確保すればよいとなれば、かなりの費用節約となります。
立地によって売上が左右されにくい
店舗を持たない飲食店は、立地による影響が少ないです。店舗を構えると、どうしても客層が「店舗周辺地域で暮らしている人々」に限定されます。店舗を持たない飲食店の例で言えば、配達なら、お客さんが実際に足を運ばれるより、広い範囲の客層を取り込むことができるでしょう。移動販売なら、需要のある時間と場所を選んで効率よく販売を行えます。飲食店の開業では、立地が非常に重要だと言われています。自店の商品にマッチした客層がいるエリアへ移れることが、店舗を持たない飲食店ならではの強みと言えるでしょう。
戦略変更がしやすい
店舗を用意すると、お店の形態やメニューの変更がしにくくなります。一方で、店舗を用意していない場合であれば、お店のシステムやメニューも簡単に変更可能です。ゴーストレストランであれば、インターネット上で操作すればメニューを簡単に変更できます。また、店舗を構えてしまうとどうしてもターゲットは店舗の周辺に住む人、働く人に限定されます。キッチンカーであれば客層や客数を見ながら最適な出店場所を探すことが可能です。需要のある時間と場所を選べば、短時間でも効率よく販売できます。飲食店は立地が重要です。エリアを選定したり、戦略を見極められたりすることは、店舗を持たない大きなメリットです。
店舗を持たない飲食店のデメリット
店舗を持たない飲食店を開業する上で考えられるデメリットを紹介します。
集客に苦労する
店舗を持たない飲食店の種類にもよりますが、まず、店舗がいつもそこにある訳ではないケースがほとんどです。店舗がある飲食店は、通りかかれば常に意識してもらえますが、店舗を持たない飲食店は見えないも同然です。インターネットの店舗情報を見つけてもらい、店舗の実態が伝わるようにしなければ集客ができません。お店専用のSNSを開設し、商品の写真やお店の情報をこまめに発信するなど、積極的に広告を打つ必要があります。
配達・販売ルート確保に費用がかかる
店舗を持たない飲食店は、配達サービスの利用料や、移動販売用のキッチンカーの準備といった配達・販売ルート確保には、人件費や手数料などの費用がかかります。例えば、Uber Eats(ウーバーイーツ)ならデリバリーサービスの手数料として売上総額の35%が必要と言われています。
設備やメニューに制限がある
実店舗を持たない飲食店は、その形態ごとに用意できる設備や環境が違うため、提供できるメニューに制限があります。例えば、ゴーストレストランであれば配達が基本なので、調理してすぐに食べて欲しい料理には不向きです。さらに、フードトラックも設備が限定されるため、大掛かりな調理が困難な場合があります。
ゴーストレストランでもフードトラックでも、その条件でできるメニューに限定されてしまうので、本当に提供したい料理と提供するメニューが離れてしまうこともあります。自分が提供したい料理が、その販売形態でも問題ないかどうかは事前によく検討しておきましょう。
店舗を持たない飲食店の種類
店舗を持たない飲食店にはいくつか種類があります。以下が代表的です。
- ゴーストキッチン
- クラウドキッチン
- キッチンカー(フードトラック)
- 自宅・週末カフェ
- ソーシャルダイニング
- コンテナハウス
それぞれについて説明していきます。
ゴーストキッチン
「ゴーストキッチン」とは、店内に飲食スペースを構えず、調理のみに特化した事業形態で、ゴーストレストランとも呼ばれます。デリバリーやケータリングのサービスを利用した宅配専門の業態のため、料理を提供する厨房設備だけがあればよく、開業にかかる初期費用や開業後の運転資金を大幅に抑えられるのが特徴です。
クラウドキッチン
「クラウドキッチン」は、ゴーストキッチンの一種で、レンタルキッチンやシェアキッチンなど調理場所を間借りするのが特徴です。調理スペースが自前かどうか、という点でゴーストキッチンとは区別されます。こちらはキッチン設備への投資が必要ないため、設備費用を削減してさらなる費用の節約が可能です。
キッチンカー(フードトラック)
「キッチンカー」は、その名の通り自動車を調理や販売の場として使う移動販売型の業態で、アメリカでは「フードトラック」と呼ばれています。場所を選ばず営業できることから、近年増加傾向にあります。キッチンカーを始めるための手続きには、ゴーストキッチンと同様に開業届や飲食店の営業許可の取得などがあります。店舗の確保が不要な代わりに、営業道具かつ移動手段となるキッチンカーの準備が必要です。
自宅・週末カフェ
この場合は店舗があるといえばあるのですが、店舗として建てられた建物ではなく自宅などを利用し、平日のみ、あるいは週末のみ飲食サービスを提供するような業態もあります。自宅を店舗としているから「自宅カフェ」、週末のみ営業するので「週末カフェ」などいろいろな呼び方がありますが、明確な定義はありません。
ソーシャルダイニング
「ソーシャルダイニング」では、シェアスペースや定休日で空いている他店舗などを借りて飲食サービスを提供します。単に飲食の提供だけでなく、料理を提供する側とサービスを受ける側とのマッチングといったコミュニケーションの場としても注目されています。ソーシャルダイニングなら、自前の店舗施設や調理設備を用意する必要がありません。
コンテナハウス
「コンテナハウス」は、飲食店に限定した場合、店舗準備も引っ越しも楽なコンテナハウスで営業する方法、またはそのコンテナハウスの店舗のことです。厳密にはコンテナハウスという店舗を持っていますが、建物ごと移動できるコンテナハウスであれば資金が少なくて済む以外に、撤退や移動も楽なので、立地面でのリスクを低く経営できるのが利点です。コンテナハウスを専門に扱う業者もいるので、手を出しやすく、立地が読みづらい今の飲食店経営に向いている形態のひとつと言えるでしょう。
まとめ
店舗がない分、初期費用などの節約にはなりますが、集客が難しい、デリバリーの委託には手数料がかさむといったデメリットもあります。開業するには、一般的な飲食店と同じく営業許可の取得も必須ですし、業態によっては複数の許可を取らなくてはなりません。
営業許可など、各種の必要な許可を取っておかなければ食品衛生法や消防法など法令違反となり、営業取消などの処分を受けることになります。事業にどんな手続きが必要なのか、どんな設備を整えておくべきなのかを事前に必ず確認してください。