夢の味わいへのカウントダウン!飲食店開業までのスケジュール
飲食店を開業する準備を始めてからオープンするまでにやることが沢山あります。
お店のコンセプトを決めたり、資金の準備、計画・店舗物件探し・内装、設備工事・メニューや仕入先の決定・開店、営業に係わる各種届出・スタッフの採用、教育・開店前準備など、多岐にわたり準備が必要となります。例えば、飲食店を開業するときに調理師免許は、無くても居酒屋は開業できます。必要な資格としては「食品衛生責任者」があります。飲食物を扱うお店であれば、1店舗に1人の食品衛生管理者が必ず必要になります。
また、お店の規模が従業員を含め、30人以上の店舗になる場合は、消防法により、「防災管理者」を選任する必要があります。そして、お酒を提供する飲食店が夜0時以降も営業する場合や主にお酒を提供している場合には「深夜酒類提供飲食店営業開始届出」を警察に出さなければいけません。
今回は、飲食店開業する為の基礎知識や準備からオープンまでのスケジュールついて解説していきます。
飲食店開業のベストタイミングとは?
飲食店を開業するにあたって、時期的に最適なタイミングがあります。当然業態や出すメニューによって異なってきますが、一般的には9月~10月です。
理由として、クリスマスや忘年会、新年会などのイベントにより、12月~1月は飲食店が最も忙しくなる時期です。お客さまの立場からも予約が取りにくく、宴会やパーティーができる飲食店を探すのに苦労する時期で、お店にとっては繁忙期になります。繁忙期に不慣れな接客でお客さまをお迎えするのは避ける事を考え、最初の2~3か月はお店を周知させ軌道に乗せる期間、仕事に慣れるのに必要な期間として考えて逆算すると、開店時期は9月~10月に向けて準備を進めるのがベストと言えるでしょう。
その他には、自己資金がある程度貯まってきたときも開業をするタイミングです。開業後に一番苦労することとして、運転資金の問題があります。自己資金が不足していると、運転資金にも影響が出るうえ、金融機関からの融資も受けづらくなってきます。一般的には、開業資金の3分の1は自己資金で補えると良いとされています。勢いや熱意だけで開業しても、長続きしなくては意味がありません。経験を積みながら自己資金の貯まるタイミングを見極めて、開業日の設定をしてみましょう。
店舗コンセプトの立案~確定(出店する約1年前~半年前)
飲食店を開業するにあたり、業態、想定客層、価格帯などを細かく検討し、どのようなお店にするかコンセプトを作り上げます。コンセプト作りのポイントは以下になります。
- 業態(イタリアン、大衆居酒屋、フレンチなど)
- 想定客層(性別、年齢、職業、趣味嗜好、ライフスタイルなど)
- 価格帯(メイン商品、サブ商品、飲み物、時間帯別など)
- メニュー(メニュー種類、調理方法、味付けなど)
- 店舗雰囲気(店舗の広さ、内装、取り付け家具、厨房など)
ある程度コンセプトが決まったら、お店の名前を考えましょう。つけた名前が商標登録されている可能性がありますので、事前に調べておきましょう。
(参考記事)コンセプト作りの考え方について
物件探し~契約(出店する半年前)
立案したコンセプトに見合った物件を探します。但し、なかなか希望通りの物件は見つかりません。場合によっては物件に合わせてコンセプトを練り直します。そして、物件は場所によって特徴があります。
オフィス街
会社勤めのサラリーマンがメインターゲトになります。平日の売上は見込めますが、休日は集客から難しくなる傾向にあります。家賃設定も高めです。
駅前
駅前は人が最も集まる場所なので好立地です。但し、その分賃料が高くなりますので、単価を上げるか回転率を上げるかの判断が重要になります。
繁華街
商業施設が立ち並び多くの人が集まる好立地です。集客力は十分ですが、賃料が高い設定です。
商店街
周辺住民がターゲットとなります。家賃設定は低めですが、如何に商店街・近隣の方に興味を持ってもらうかがカギになります。一風変わったお店にすれば、商圏外からの顧客も取り込めます。
住宅街
主婦層や高齢者がターゲットとなるためそれを見越したコンセプト設定が必要になります。家賃設定は低めです。
国道などの幹線道路沿い
車での来客が基本的なので、駐車場計画や看板の見え方により集客が大きく影響します。家賃設定は普通価格です。
その他、階数や周りの環境によって物件はさまざまな特徴がありますが、飲食店開業を始めようとした時から常に行く先々で物件について確認しておくことが重要です。そして、物件を選んだ街にはどのくらいの人口がいるかは重要になります。人口データは総務省統計局のページから確認しましょう。
(参考記事)【飲食店開業】出店する立地の選び方について
(参考記事)飲食店の店舗物件を探す方法について解説
資金計画~融資申請(出店する3~4ヵ月前)
飲食店開業する場合、自己資金と足りない分を融資による借入をする場合が多いです。融資による借入をする場合、金融機関の審査を通る為には、綿密な事業計画(収支計画)を作る必要があります。飲食店開業で資金の考え方として必要な項目は下記になります。
- 投資計画:いくら借りるか
- 売上計画:どれくらい売れるのか
- 損益計画:どれくらい儲かるのか
- 経費算出:どれくらい経費がでるのか
なかなか自分自身で計画を作るには知識と労力がいります。特に飲食店は他の業種に比べて廃業率も高く、金融機関もシビアな目で確認します。資金調達に強い専門家(税理士など)と協力して作成することが融資成功の近道になります。
そして、創業融資を検討する際に「日本政策金融公庫」を候補に考えます。創業にかかる経費を自己資金だけで賄えない場合、日本政策金融公庫の新創業融資を借りることは最良の策と言えるでしょう。日本政策金融公庫の調査データで、事業計画を作成した起業家は31.1% ( 自己資金100万未満は15% 自己資金500万以上は53%)という結果があります。およそ70%の起業家は創業事業計画を作らずに起業しているということになります。創業計画書は、単に収支を出すだけでなく、会社ビジョンや必要経費の算出など、これから行う事業の洗い出しには大変役立ちます。特に起業準備期間に作成しておくと、より起業後のイメージをすることが出来ますので、作成しておくことをお勧めします。
(参考記事)飲食店開業時の代表的な5つの資金調達方法とは?
内装業者の選定~工事引き渡し(出店する3ヵ月前)
飲食店開業資金の中で大部分がこの内外装工事でかかってくる部分です。数百万から数千万に費用が発生します。大金が動きますので、それだけ内外装業者選びは慎重にいかなくてはいけません。
ほとんどの場合、知り合いの業者か、知り合いに紹介してもらった業者さんに依頼するかと思いますが、工事にかかる部分は専門的な為、価格が適正か判断が難しいところです。必ず複数業者に相見積もりをすることと、見積の項目には「一式」ではなく「それぞれかかる費用」を記載してもらうようにしましょう。
その他、飲食店開業の内外装業務を行ったことがない業者は注意が必要です。経験豊富ではないと、保健所の許可が下りる仕様ではないまま工事が進んでしまい、結果店舗営業できない内装になってしまったり、更に費用が発生する可能性があります。このようなことを踏まえて業者を探すことが重要です。
- デザイン専門の設計事務所
- 設計と施工を行う内装会社
- 施工メインの内装会社(工務店など含む) など
- インターネットや雑誌などで探す
- 友人・知人からの紹介
- 気に入った飲食店舗のオーナーからの紹介 など
(参考記事)内外装工事の流れについて
厨房機器、備品などの購入(出店する2ヵ月前)
飲食店では、厨房機器や膨大な数の備品を揃える必要があります。拘りがあることは否定しませんが、出来ればコストを抑えて汎用性のあるものを選びましょう。購入先としては、メーカーからの直販、インターネット通販、近くの量販店などで揃えましょう。厨房機器については高額になりますので、リースも検討しましょう。
店舗用BGMを取り扱っているUSENのような会社は、飲食店開業関連の商材を数多く揃えていますので、そういった会社からトータルで安くリースするのも得策です。
(参考記事)【飲食店開業】食器・備品について
メニュー開発、仕入れ業者選定(出店する2ヵ月前)
立案したコンセプトを基にメニューを開発します。コンセプトや今までの飲食経験によって変わってきますが、はじめて飲食店を開業する方はできるだけ数を抑えめに始めましょう。開業時は、慣れていないため、仕込みや調理に時間がかかり、手間取ってしまう可能性があるためです。そして、メニューの開発をしたら、友人や知人を呼んで、試食してもらいましょう。良い意見も悪い意見ももらって、改善を心がけます。
そしてメニュー開発が終了したら、開発したメニューに沿った仕入れ業者を選定します。
仕入れ業者選びについては、飲食店経験者であれば、今までのコネクションで選ばれるかと思います。当然、一番融通がきき、出店時にビールサーバーや食器、グラスなどの協賛品などを出してもらえる会社もあります。現在、飲食店にお勤めの方は仕入れ業者から色々聞いてみることが必要です。
また、これまで飲食店に携わってきていない方であれば、インターネット上で様々な仕入れ業者をみつけることが出来ますので、まずは一度インターネットでお近くの仕入れ業者を探し、仕入れ業者からの話を直接会ってから、聞いてみるもの良いでしょう。
(参考記事)【飲食店開業】仕入先を探す方法について
従業員採用計画~採用面接(出店する1ヵ月前)
従業員採用方法として「店内チラシ」「ポスティング」「アルバイト情報誌」「求人サイト」「従業員からの紹介」などありますが、社員として雇用する場合は、身内や今まで仕事を一緒にしてきた方などで構成するのが望ましいです。
自分のお店にあった人材を採用し、できる限りスムーズにオープニングを迎えられるよう、スタッフを巻き込んで店舗オペレーションの確認やトレーニングをしていきましょう。
(参考記事)オープニングスタッフ募集や採用面接の注意事項について解説
店舗開業までの届出(出店する1ヵ月前)
飲食店を開業するにあたり2つの資格と、用途によって申請や届出が必要になってきます。
- 食品衛生責任者
- 防火管理者
「食品衛生責任者」「防火管理者」を取得しないと保健所の許可及び営業許可がおりません。
- 飲食店営業許可申請
- 個人開業届・法人登記
- 消防署に届出(条件あり)
- 警察署に届出(条件あり)
その他、従業員を雇う場合は、「労災保険」「雇用保険」の加入手続きが必要になります。
(参考記事)飲食店を開業するのに必要になる資格・許可・届出について
販売促進(出店する2週間前)
工事をしていると注目の的になります。特典をつけたお店のチラシを貼ったり、WEB上で告知をしましょう。近隣住民や近隣の施設・会社などにチラシを渡すことも重要になってきます。
豆知識! Googleマイビジネス(マップ)の登録をしておきましょう
皆様が普段使っている「Google」そしてGoogleのサービスで飲食店などの店舗型のビジネスは必ず登録しておくべきツールがあります。それがGoogleマイビジネスです。Googleマイビジネスは、Google検索や Googleマップなど、さまざまな Googleサービス上にお店の住所や電話番号や営業日時などの情報を登録できる無料ツールになりますので、是非登録しておきましょう。
(参考記事)【飲食店開業】販売促進方法について
研修実施~オープン(出店する1週間前)
採用者に対して、研修を実施し、晴れてオープンです。オープンすることがゴールではなく、スタートラインに立ったばかりです。これから皆様には色々な計画があると思いますが、日々の営業で改善した方が良いところなどがたくさん出てくると思います。
今日までは正解だったことが、明日には不正解になることもあります。あなたがその店舗の責任者として、今何をすべきか、従業員にどのように伝え、どう育てるべきか?、お客さんに喜んでいただく為には?、などを常に考えて繁盛店を作り上げていただくことを願っています。
(参考記事)飲食店オープン前にプレオープンは行うべきか?
お店をオープン後について
念願のお店をオープンまで漕ぎ着けられたからといって安心していてはいけません。開店後、いかに上手にお店を運営していくかが成功への道のカギとなります。
実際に営業を始めてみたらオープン前の試算とは違って従業員がもっと必要になった、メニューの金額ではとても採算が合わないなどの修正事項がいろいろと出てくるのは当たり前です。毎日改善できる点はすぐに改善し、「こうやれば売上げが伸びる」「このメニューを加えればお客さまが増える」などアイディアを絶やさず努力していくことが大切です。
まとめ
飲食店は開業しても1年未満で約35%、2年以内で約15%、約半数の飲食店が2年以内に廃業している現状があります。開業準備は資金調達、物件探しを中心に内外装、許認可・免許・届出、従業員採用と多岐にわたり行うことがありますので、抜け漏れのないように準備していきましょう。そして各分野には専門家(税理士、行政書士、社会労務士、内外装業者、仕入れ業者など)がいますので、用途に沿った専門家に相談しましょう。