飲食店における接客マニュアル作成のコツや注意点について解説
どんな飲食店店舗にも「接客マニュアル」が存在するはずです。しかし、従業員に共有されていなかったり、徹底されていない店舗があれば意味がありません。そもそも接客マニュアルがない店舗もあれば、意思統一ができず、お店の運営能力低下や顧客満足度が低くなってしまいます。
そこで今回は、効率的で良質なサービスを提供するための接客マニュアルについて、基本的な説明から作成のコツや注意点について解説していきます。
※この記事を書いている「飲食開業のミカタ」を運営している株式会社ベクターホールディングスが発行している「起業のミカタ(小冊子)」では、更に詳しい情報を解説しています。無料でお送りしていますので、是非取り寄せをしてみて下さい。
接客マニュアルとは?
接客マニュアルとは、主に店舗でスタッフの接客のマナーや、お客さまが来店してから帰るまでの一連の流れをマニュアル化したものをいいます。接客スタッフにしっかりと接客のポイントを身に着けてもらうために、基本となるマナーや業務フローを見える化することによって、誰でも一定以上のレベルの接客ができるように作成されることがほとんどです。接客マニュアルによって、新人の教育を効率的でスムーズなものにするという狙いもあります。
接客マニュアルの目的
そういった業務効率化の点以外にも、さらに接客マニュアルを作成する目的として以下のようなものがあります。
新人を即戦力にする為
どんな職場であっても、スタッフを雇い入れ、実際に戦力となるまで育てるには労力やコストがかかります。その都度先輩のスタッフが独自の方法で教育してしまうと、どうしても人によってムラやムダが発生してしまうことになります。
逆に業務目的や方法が体系立てて解説されたマニュアルがあれば、教える側も教えられる側も情報の整理がしやすくなり、相対的に早く新人スタッフの戦力化につながります。
お客さまを「もてなす」意識を育てる為
日本的な接客の考え方に、相手を「もてなす」というものがありますが、曖昧な言葉だけにやり方だけを教えても、なかなか実行に移すのは難しいものでしょう。
ですがマニュアルに「それがなぜ大事なのか」「何を目的としているのか」といった部分の指導をマニュアル化することによって、お客さまを「もてなす」意識を育てていくことができます。
接客スキルや基本的なビジネスマナーの向上の為
接客の必要事項をマニュアル化しておけば、新人スタッフはこれまで知らなかったことを繰り返し学べることに加えて、わかっていてはいても実際はできずにいたことを修正できます。自社のスタッフとして望ましい対応が可能になるまで繰り返しレベルアップを目指すことができるようになります。
サービスのレベルを一定に保つ為
マニュアルによってどんなスタッフも一定のサービスを提供できるようになります。逆に言えば、マニュアルがなければ顧客対応に差が出てしまう可能性が高くなってしまうでしょう。これは店舗における接客だけではなく、一般企業の営業などでも同じです。
考え方の「基準」を身に着けてもらう為
これもサービスの質を均一化することにもつながりますが、マニュアルによってすべてのスタッフに共通した考え方の基準を身に着けてもらうことができます。それまで個人でバラバラだった接客態度やノウハウが標準化・統一化されると、同じ考え方にしたがって一体感が生まれ、それがチームワークにもつながってきます。
接客でしてはいけないこととは?
基本的に接客で以下の事をしてはいけません。お客様はスタッフや店の事を見ているので気をつけるようにしましょう。
- 不潔な服装、身だしなみ(ぼさぼさの髪・厚化粧・香水・爪や制服の汚れ等)
- お客様を無視しない
- どんな状況でも冷淡な態度はとらない
- 成人でなくても子供扱いしない
- ロボットのような機械的な接客をしない
- 従業員同士のおしゃべりをしない
- お客様をたらい回しにしない
- 腕組みをしない
- 小さい声で話をしない
- 髪をさわらない(口に入れるものを扱うため、不潔な印象を与えます)
- お客様に言われたことを自分の言葉で言い直さない
- 知ったかぶりをしない
- 特定の政党、宗教、球団を話題にする(思想や好みに違いがある話題は避けます)
- お見送りをせずに片付けを始めない
接客マニュアルに盛り込むべき内容とは?
接客の基本
接客時の心構えや基本的なマナー、そして接客シーンごとに特に注意すべきポイントについて記載していく必要があります。その場で臨機応変に対応できるスタッフもいればそうではないスタッフもいますから、よくあるシチュエーションはできるだけ具体的にどう行動すべきかを明記しておくとよいでしょう。
服装
接客の基本として、お客さまと接するにふさわしい服装について説明します。店舗用の制服がある場合は制服の正しい身に着け方や髪型、あるいは化粧などの身だしなみに関する注意事項を記載しておくとよいでしょう。店によっては制服を支給したまま身だしなみにあまり言及しないところもありますが、統一感を出すためにもできるだけ具体的にしておくべき事柄といえます。
言葉遣い
接客の基本となる言葉遣いについても記載しておく必要があります。特に業務フローごとに事例を挙げながら説明すると、新人スタッフでも対応できるようになるでしょう。すぐに完璧なものにならならなくても、マニュアルでどういう言葉遣いが推奨されるかを示すことによって、徐々にスタッフ間で意識が共有されていくようになります。
商品やサービスに関する知識
よい接客のためには、各スタッフはこちらが取り扱っている商品やサービスに関する一定上の知識を持ち合わせている必要があります。マニュアルには最低限知っておかなければならない商品・サービスの知識を盛り込んでおきましょう。また、わからないことがあった場合に誰に聞けばよいか、何を参照すればよいかといったことに関しても記載しておくとよいでしょう。予想外の場面に遭遇しても、スタッフが慌てずに済むようになります。
基本的な接客フロー
お客さまを出迎えてから見送るまでの業務フローを可能な限りわかりやすく記載しておく必要があります。言葉だけで説明してもイメージが湧きづらいことも考えられますから、写真やイラストを挿入するなどしてスタッフが理解しやすい内容にしておきましょう。
クレーム対応
クレームを受けたときの適切な対応方法について、具体的な事例を交えて記載しておく必要があります。これまでにあった事例や頻度の高いクレーム案件を記録しておき、状況別に最適な対応は何かを記載していくとよいでしょう。実際にそういった場面に遭遇した際に、スタッフがマニュアルを参照すれば解決できるようにしておくのがベストです。
具体的な接客の仕方について
上記の基本的な接客フローでもお知らせしましたが、ここでは具体的な接客の仕方について説明します。
メニューの出し方
お客さまが見やすいように、開いた状態で渡します。メニューは原則的に一人一冊で、家族連れの場合は大人の人数分渡します。
オーダーのとりかた
お客さまがメニューから顔を上げた段階で速やかにテーブルに伺います。
『ご注文はお決まりでしょうか?』
オーダーが決まっていない場合、
『ご注文が決まりましたら、お呼びくださいませ』
お辞儀をして、一旦席を離れます。
オーダー内容は、品目と品数に間違いがないか、復唱しながら伝票に記載していきます。すべてのオーダーを伝票に記載したら、最後にオーダー内容を復唱し、確認を行った後、一礼して下がります。
『ありがとうございます。ご注文を繰り返します』
『○○がおひとつ、□□がおふたつ・・・』
『以上でよろしいでしょうか』
『かしこまりました、少々お待ちくださいませ』
料理をお出しする
厨房から料理が出てきたら、料理が冷めないように素早くお出しするように心がけます。料理はお客さまの左側から出します。
『(料理名)はどちら様でしょうか?』
『ご注文の品は揃いましたでしょうか?』
『ごゆっくりどうぞ、失礼します』
会計
お客さまの伝票を両手でお預かりして、レジに打ちます。無言で受け取ることは絶対に避けましょう。
『ありがとうございます、伝票をお預かりいたします』
『合計で3000円になります』
『恐れ入ります、1万円をお預かりいたします』
『7000円のお返しになります、お確かめください』
最後にお会計が終わったら、まずは忘れ物が無いか確認します。そしてお客さまが帰りの支度が出来たことを見計らったら挨拶します。お店を出るまでしっかりとお見送りしましょう。
領収書について
領収書を依頼されるケースがあるかと思います。領収書を書くときには、以下の記載に抜けが無いか、注意します。途中で書き間違えた場合は、その紙は破棄し、次の用紙に書き直します。鉛筆など書き直せるものはNG、必ず黒色か青色のペンを使用します。
- 日付
- 宛名
- 金額
- 但し書き
- 認め印
- 会計金額が5万円以上の場合は、印紙を貼り、割印
まとめ
スタッフ一人ひとりの心構えから、服装などの身だしなみ、さまざまな接客シーンでの適切な対応など、マニュアルに盛り込むべき事柄はたくさんあります。しかし、重要なのはその店舗が「どういうサービスを実現したいか」というビジョンです。それによってマニュアル化すべき内容を取捨選択することが重要となります。もしそういった視点が欠けていると感じたならば、ぜひ自店舗の接客マニュアルを見直してみましょう。
最後にどれほど細かくマニュアルを設定しても、その対応が適切ではない場面に遭遇するということを知っておく必要があります。接客はお客さまや状況によって変化するため、お客さまの視点で何を求めているのかを考える姿勢をもつことが大切になってきます。
接客7大用語とは、お客さまへの接客で使用する代表的な用語です。この7つを覚えるだけで、ある程度の接客ができてしまいます。どれも必ず使用するシーンがあるので、必ず覚えておきましょう。
- いらっしゃいませ
- かしこまりました
- 少々お待ちください
- お待たせ致しました
- 申し訳ございません
- 恐れ入ります
- ありがとうございました、またご利用ください