【飲食店】人件費率の目安はどのくらいなのか?人件費率の数字を下げるための方法とは?
飲食店を経営する上で売上は大変重要で、1日の売上目標を設定し、達成に向けて日々頑張っているお店も多いことでしょう。しかし、健全な経営を続ける上で本当に重要なのは、売上よりも利益です。そして、継続的に利益を上げるために絶対に考えなければならないうちの一つが、人件費です。
今回は、「飲食店において人件費率の目安はどのくらいなのか?」「人件費率の数字を下げるための方法とは?」について解説していきます。
なぜ人件費率を考えることが重要なのか
人件費とは人に関連して支払われる費用のことで、雇っている社員やパート、アルバイトの給料が含まれます。人件費は、飲食店を経営するコストの中で大きな部分を占めています。お店が繁盛して売り上げがたくさんあがっていても、人件費が高くつくなら手元に残る分は少ししかありません。
そこで、飲食店の売り上げに対して、人件費がどれほどの割合を占めているかをきちんと管理することが重要になってきます。この、売り上げに対する人件費の割合を、人件費率と言います。人件費をしっかり把握しておくことは、お店の収益性に大きな影響を与えるため、経営管理の観点からとても大切です。人件費をきちんとコントロールすることが、お店を成功へ導く一番の近道だと言われることもあるほどです。
現在、国の政策で最低賃金がどんどん上がる中、安い給料ではパートやアルバイトなどの従業員が集まりにくくなっています。少子高齢化により、どの業種でも人手不足が叫ばれており、特に飲食店の人手不足は深刻です。人件費について考えるときは、こうした社会的背景を理解して、それに合わせた適切な給与形態を設けることが欠かせません。経営者であるなら、お店の適切な運営のためにたくさんある支出の項目の中でも特に人件費を重要項目として捉えて、経営効率を高めることを目指しましょう。
人件費率には従業員の給与以外も含まれる!?
人件費率を計算するとき、多くの人は「人件費=従業員に支払われる給料」と考えがちです。この考えは正しいものの、人件費に含まれるのはそれだけではありません。では、人件費の具体的な中身とは何でしょうか。
まずは、すぐに思い浮かぶ給与手当です。給与手当には、基本給のほかに残業手当や賞与、通勤手当なども含まれます。次に、福利厚生の費用です。健康保険・介護保険・厚生年金保険などの社会保険や、労災保険・雇用保険などの労働保険の費用も、お店の負担分は人件費になるのです。従業員の福利厚生のためにサークル活動や社員旅行などを実施している場合は、そうした費用も含まれます。お店を辞める従業員に退職金を支払う場合は、それも人件費として計算します。
飲食店における人件費率の目安はどのくらいなのか?
人件費にはどんなものが含まれるか分かったら、次は人件費率について考えてみましょう。
(人件費÷売り上げ)×100の計算式により、人件費率を算出できます。
人件費率を考えるとき、セットで考えたいのは食材費です。人件費と食材費は変動費であるため、適切な管理が必要になってきます。飲食店経営において、人件費と食材費が主な出費となり、利益率に大きく影響を及ぼします。仮に人件費が高くついても、食材費を安く抑えることができるなら、経営は安定した状態を保てるでしょう。その反対に、人件費をいくら削減しても、食材費が高くついて経営を圧迫してしまうこともあります。そのため人件費と食材費を合わせたコストを、売り上げ全体の55~60%が適正という考え方もあります。
人件費率の数字を下げるための方法とは?
ここからは、お店の人件費率を下げるための効果的な方法をお知らせします。
店舗の「アイドルタイム」を見極める
人件費を抑える最大のポイントは、お店の忙しくないアイドルタイム=忙しくない時間帯を見極めること。人手が不要な時間にまでアルバイトのシフトを入れているとコストばかりがかさんでしまいます。一日の売上だけでなく、時間帯ごとの売上も記録して、売上が少ない時間帯=忙しくない時間帯のシフトは最小限にするなど、“ムダ”を減らす工夫をしましょう。
店舗のオペレーションを見直す
「忙しい夜の時間帯は6人シフト」など、以前から決まっているからとそのまま運用しているケースもあるのではないでしょうか。しかし、注文を取るフロアスタッフと座席の案内や会計をするスタッフが別にいるケースなど、役割をまとめられる場合もあります。どんな役割を与えてどのように動くともっとも効率的かを考えると、その時間帯に必要なスタッフ数を減らすことにもつながります。また、タブレット端末などでお客様自身に注文をしてもらえるようにするセルフ注文システムを導入することでもフロアスタッフの削減につなげることができます。
労働時間を見直す
時間帯による集客の傾向を分析して、従業員の労働時間を見直すことです。時間帯ごとに集客率や売り上げを計算して、適切な従業員数になっているかどうかチェックしてみましょう。ピークタイムには十分な人手を確保しつつも、それ以外の時間帯については細かく調整するとコストを減らせます。仮に、時給1,000円のお店で1日30分ずつアルバイトの労働を減らしたとすると、1ヶ月では1万5000円、年間では18万円にもなります。短時間労働の従業員が働くシフト時間を調整すれば、全体として見ると大きなコスト削減です。
人件費の高騰の原因である、夜間の労働や残業代を見直すこともできます。下準備や事務作業など、別の時間にもできる仕事はなるべく日中に行いましょう。営業時間終了後に仕事が残っている場合も、翌日にできるものは残業せずに翌日に回すようにします。
生産性の高い従業員を定着させる
最後のポイントは、少ない従業員数でもスムーズに仕事が運ぶよう、生産性の高い従業員を定着させることです。働く人の入れ替わりが激しいお店では新人従業員がよく入ってくるということになり、教育にかなりの時間がかかります。また、注文を聞く、洗い物をするといった簡単な仕事であっても、新人と熟練従業員とでは作業時間や仕事の質に大きな差が出ます。生産性の高い従業員を雇うためには、長く働いてもらえる環境を整えることが必要です。長時間労働をさせない、休暇を取りやすくする、風通しをよくするなど労働環境を整備すれば、長く続ける従業員は自然と多くなり、生産性の向上が期待できます。
経営者なら知っておきたい様々な「人」に関する指標
「人」に関する指標は「人件費率」だけではありません。経営において大切な指標がいくつかあるので、簡単にご紹介していきましょう。
- 人時売上高
- 労働分配率
- 労働生産性
- 平均時給
労働時間1時間につき、どの程度の売上高が得られるかを表した数値。計算方法は「売上高÷従業員の想定労働時間」。基準値は4000円以上。
粗利高に占める人件費の割合。付加価値に対する人件費の割合を示す指標であり、店が新たに生み出した価値のうち、どれだけ人件費に分配されたかを示す指標。計算方法は「人件費÷粗利高×100」。基準値は40%以下。
従業員1人あたりの生産性を示す指標。計算方法は「粗利高÷換算人員」。基準値は500,000円以上。
社員・パートも含めた1人1時間当たりの時給。計算方法は「総人件費÷想定労働時間」。基準値は1,200円以下。
上記の数値を分析しながら、人件費を含めた経費を総合的に調整していくことは細やかな経営には欠かせません。
業務効率を上げて結果的に人件費の節約する事を考えよう!
ここからは、業務効率を上げて、人件費の節約する方法を紹介します。
システムを導入して業務効率を上げる
スタッフさんの仕事を少しでも少なくするため、食券機やPOSレジ(どの商品がいくつ売れたか管理できるレジ)なので、システムを導入するのがオススメです。システムを導入すると、少ない人数でもお店を運営できるので、人件費を節約できます。また、スタッフさんの時給を減らす必要はないので、スタッフさんのモチベーションも下がりません。
マニュアルやオペレーションの簡略化で業務効率を上げる
「マニュアルを作るのは、ちょっと面倒」と思うかもしれません。しかし、1回マニュアルを作ると業務効率が上がります。仕事をマニュアルにまとめておけば、新人のスタッフさんの教育コストを減らせます。
オペレーションを改善する
仕事が早くなるように可能な範囲で、オペレーションを改善しておきましょう。例えば、以下の取り組みをするだけで、業務効率は上がります。
- ナイフやフォークはテーブルにセッティングしておく
- お店はセルフサービスにする
- 掃除がしやすいように物を減らす
- 物の位置を決めておく
お店のスタッフで話し合って、「どうすればもっと効率よくできるのか?」を話し合うのもスタッフさんがお店の一員と感じてくれるので、オススメです。現場によく立っているスタッフさんからは、貴重な意見をもらえることもあります。
まとめ
いかがでしたでしょうか?今回は、「飲食店において人件費率の目安はどのくらいなのか?」「人件費率の数字を下げるための方法とは?」について解説しました。
人件費は、会計上は経費として扱いますが、お店を一緒に作ってくれるスタッフさんへの投資でもあるので、安易に削減をせずに業務効率を上げて働きやすいお店を作ることを目標にしてみましょう。
実際、繁盛しているお店なら、「時給1,200円」や「時給1,500円」と高い時給を出していることも多いです。繁盛しているお店は業務効率を上げて、少ない人数、短い時間でも運営できるお店を作っているのです。業務効率を上げておけば、スタッフはきちんとした時給をもらえて、お店側は人件費を抑えられるという人件費の管理方法ができます。
適切な人件費管理は経営の安定につながります。まずは人件費率を計算して、現状をつかむことから始めましょう。