日本料理店での開業~必要資格・手続きから開業資金など~
「和食や日本酒が好きだから自分が大好きな日本料理店を出す」という考えている方も多くいらっしゃるでしょう。日本料理店を出店する為には、取得しなければいけない資格や手続きが多くあります。
今回は、日本料理店での開業について解説していきますので、開業の為の知識を事前に身に着けておきましょう。
日本料理とは?
日本料理はフランス料理、中華料理と並んで「世界三大料理」の一つと言われておりますが、日本料理の最大の特徴は自然の食材に恵まれているということです。この自然の素材の味を殺さないように調理されます。この点で、素材に外からの旨みを添加して食べる中華料理やフランス料理と異なっています。
なお、一口に日本料理と言っても、会席料理・懐石料理・精進料理・川魚料理から、うなぎ・天ぷら・ふぐ等の専門料理に至るまで、その形式や種類も多種多様です。これにしたがって料理店の方も、料亭・割烹・カウンター割烹・専門料理店などと多様に分かれています。
日本料理店開業に必要な手続や資格
日本料理店を開業する場合には、いくつかの手続が必要です。
飲食店開業のための手続き
保健所での手続き
飲食店の営業では「営業許可」という許可をとる必要があります。営業許可は店舗の住所地を管轄する保健所で申請することが出来ます。この際に、店舗の図面などが必要となる事があります。
消防署での手続き
防火対象設備使用開始届などの届出が必要となります。また、収容人数が30人以上(従業員を含む)になる飲食店の場合には「防火管理者の選任届け」も必要となります。
法人or個人事業主
個人事業主として行う場合、一般的な手続きとして、個人事業の場合、個人事業の開廃業等届出書、所得税の棚卸資産の評価方法・減価償却資産償却方法の届出書、青色申告承認申請書等を納税地の所轄税務署へ提出します。また、個人事業開始申告書は事業所所在地の都道府県税事務所へ。詳しくは、最寄りの管轄行政に問い合わせが必要です。
法人として会社を設立する場合、定款作成、会社登記をし、法人設立届出書、青色申告の承認申請書、給与支払事務所等の開設届出書、源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書、法人設立届出書(地方税)などを提出します。
飲食店開業のために必要な資格
食品衛生責任者
食品衛生責任者は、各店舗に必ず1人必要となります。調理師や栄養士、製菓衛生師等の特定の資格を取得していれば食品衛生責任者になることが出来ます。どの資格も取得していないという人は、都道府県の自治体や保健所毎に行っている食品衛生責任者講習に参加すると資格を取得することが出来ます。
防火管理者
防火管理者はすべての飲食店に必要という訳ではありません。消防署の手続きでもお伝えしたように、収容人数が30人以上(従業員を含む)になる飲食店の場合、選任する必要があります。都道府県や市区町村など地域によって異なりますが、甲種新規講習は2日間、乙種は1日で取得することが出来ます。受講料は、甲種新規講習が7,500円、乙種講習が6,500円です。
日本料理店を出すなら持っておきたい資格とは?
上記で、飲食店開業に必要な資格をお知らせしましたが、ここでは日本料理店を出店する為に取得してアピールになる資格をご紹介します。
- 和食マイスター
- 調理師免許
和の作法やマナーの他、野菜や魚、汁もの、米・雑穀など幅広い「和食」の知識が身に付きます。
国家資格でありメジャーな資格です。持っていてもそれほどプラスには働かないかもしれませんが、「創作料理・創作ラーメン」などを提供しているお店では、雰囲気が出ると思います。
- 日本ビール検定(ビールに関する資格)
- ビアアドバイザー(ビールに関する資格)
- ビアテイスター(ビールに関する資格)
- きき酒師(日本酒に関する資格)
- 日本酒検定(日本酒に関する資格)
- 焼酎きき酒師(焼酎に関する資格)
3級~1級まであり、ビールに対する興味・関心があれば誰でも申し込み可能です。
ビールの基本知識のほか、美味しい飲み方、料理との組み合わせなど「ビールを美味しく提供するための資格」です。満20歳以上であれば受験出来ます。
ビールの味わい方・味・品質などを評価する知識と、テイスティングの基礎的な能力を認める資格です。
日本酒や酒類全般の知識の他、テイスティング力、季節に合った料理や酒器の提案力などが身に付きます。プロフェッショナルが取るイメージがありますが、最近では一般愛好家にも人気。誰でも受験できます。
主に消費者向けの資格であり、テイスティングもない簡単なものです。
焼酎を中心に種類の知識や、テイスティング力、料理との組み合わせなどを学びます。
日本料理店の理想の経営指数
日本政策金融公庫研究所編による小企業の経営指標では、日本料理屋の月坪売上高は12万9000円と言われていますが、できれば15万円は売り上げるようにしたいです。また、月坪売上高が20万円になるといわゆる繁盛店になります。例えば、月坪売上高が15万円の場合、20坪のお店の予定売上金額は300万円です。
また、売上原価と人件費の合計は売上金の60%以下であることが望ましいと言われています。実際に合計60%以下であるお店は少ないですが、シュミレーションを立てる時は原価率30%、人件費率30%になるようにしましょう。
そして家賃は売上の10%以下、都市部や繁華街なら12%以下、それ以外は8%以下が目安となっています。ただし、都心の駅周辺では月坪売上高が15万円で計算しても家賃が15%以下に収まらないことがあるので、その場合はお客さんの回転率やお客さんの平均単価などのデータを活用しながら考えていきましょう。
開業資金の相場
日本料理店は、店舗の大きさや業態(料亭・割烹・カウンター割烹・専門料理店など)によってかかる費用というのは大きく異なりますが、中小企業リサーチセンターの統計を見てみると、飲食店の開業資金でもっとも多い数値(頻出値)は1,000万円、平均値は1,800円程度ということがわかります。内訳 は、500万円以上1,000万円未満、1,000万円以上2,000万円未満がそれぞれ30%程度で、600万円未満、2,000万円以上がそれぞれ20%程度 です。ちなみに、自己資金は開業資金の30%が平均になります。
開業資金をどこから調達すればいいのか?
開業するにあたり、自己資金、いわゆる貯金だけで開業できればいいですが、なかなか日々の生活費なども考えると難しい所です。では自己資金以外でどこから調達すればいいのでしょうか?
日本政策金融公庫
日本政策金融公庫とは、2008年10月1日に、国民生活金融公庫、農林漁業金融公庫、中小企業金融公庫、国際協力銀行の4つの金融機関が統合して発足した100%政府出資の政策金融機関です。全国に支店網があり、固定金利での融資や、長期の返済が可能など、民間の金融機関より有利な融資制度が多く、設立間もない法人やこれから事業を始めようとする人であっても、融資を受けやすいのが特徴です。
一般的な中小企業に関係する事業は、国民生活事業になり、国民生活事業は事業資金の融資がメイン業務で、融資先数は88万先にのぼり、1先あたりの平均融資残高は698万円と小口融資が主体です。融資先の約9割が従業者9人以下であり、約半数が個人企業です。サラリーマンには馴染みではないですが、理由として、銀行のように口座はなく、貸付のみだからになります。
創業者向け融資制度である「新創業融資制度」や認定支援機関の助言があれば無担保・無保証、金利が安価になる「中小企業経営力強化資金」という融資制度がお勧めです。
信用保証付の融資
「信用保証協会」という公的機関に保証人になってもらい、民間の金融機関から融資を受ける制度です。貸倒のリスクを信用保証協会が背負うので、実績のない創業者が民間金融機関から融資を受けることが可能となります。万が一返済が不可能になった場合は、信用保証協会が代わりに金融機関に返済し、その後債務者は、信用保証協会に借入金を返済することになります。信用保証協会は全国各地にあり、地域ごとに創業者向けの融資制度を設けています。また独自の融資制度を設けている自治体も多くあります。
手続きの手順としては、信用保証協会に保証の承諾を受け、金融機関から実際の融資を受けるという流れになります。また各自治体の制度を利用する場合は、自治体の窓口を経由することになります。
親族、友人・知人からの借入
親族・知人から借入をする際には、その人の好意でお金を借りることになります。先々トラブルにならないようにしっかりとした取り決めをおこなっておくことが重要です。いくら近い間柄とは言え、お金を貸す側の心理としては複雑なものです。また、後々トラブルになりやすい資金調達法でもあるため、甘えてしまわないよう入念な説明と借用書などを交わすなど、お互いが納得のいく取り決めをしっかりとしておきましょう。
その他注意点として、金額によっては贈与税を納めなくてはならないので、実施する場合は、贈与とみなされないよう書面(金銭消費貸借契約書)を作成したほうが良いでしょう。また、利息など契約内容も明確にし、返済は銀行口座を通じたり、領収書をもらうなどして、証拠を残したほうが良いでしょう。
日本料理は提供が遅い?
日本料理店を経営する場合、開業当初は経営者自身のみでお店を切り盛りするという方は多くいらっしゃいます。一つ一つのメニューにこだわりを持ち、仕込みから実際に提供するまで、丹精を込めてつくることでしょう。しかし、お客様から注文をうけてから提供するまでに、あまりにもこだわりが強く、時間がかかってしまう可能性があります。提供までに時間が掛かってしまうメニューがあっても構いませんが、すぐに提供できるメニューもいくつか準備しておくことが大切です。
また、お店が軌道にのって、従業員を雇用する時もくるでしょう。従業員とのコミュニケーションも、料理の提供速度に影響します。定期的にミーティングを開くなどしておきましょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか?今回は、日本料理店での開業について解説しました。
仕入れや人件費などをきちんと管理しておくことはもちろん重要ですが、日本料理店の場合は、安いだけではなく少し高級なイメージを付けておくことも、繁盛店になるポイントです。自分が経営したい日本料理店の理想像もあるでしょう。しかし、どのようなコンセプトで経営することが、差別化を図ることができ、お客様のニーズに応える事ができるのか、日々考えながら経営することが、飲食店経営を成功に導く第一歩です。