社会保険労務士(社労士)とは?飲食店が社労士と顧問契約を検討するタイミングについて解説
居酒屋やレストランなどの飲食店をを開業するにあたり、人を雇うのが初めてという経営者のなかには、どのように準備したらよいか分からないという方もいらっしゃるのではないでしょうか。そうした際に頼りになるのが、労務管理のエキスパートである社会保険労務士(社労士)です。
そこで今回は、社会保険労務士(社労士)の業務範囲や、飲食店が社労士と顧問契約を検討するタイミングについて解説していきます。
そもそも社会保険労務士(社労士)とは?
社会保険労務士とは、厚生労働省の所管で「社労士」や「労務士」などと呼ばれ、一般的に略して「社労士」と略されていることが多いです。
社会保険労務士(以下、社労士)は、労働・社会保険に関する法律、人事・労務管理の専門家として、労働・社会保険に関する諸問題、さらに年金の相談に応じる、人事に関するエキスパートです。分かりやすく言うと、会社経営における「人に関する管理業務」についてアドバイスをくれたり実務をサポートしてくれる専門家になります。
社労士の業務内容について
ここではもう少し具体的な独占業務についてお知らせします。社労士は社会保険労務士法で、以下のような「独占業務」が認められています。
労働社会保険諸法令に基づく申請書類作成、手続代行
- 労働保険(労災保険、雇用保険)の申告
- 社会保険(健康保険、厚生年金、介護保険)の算定基礎届、月額変更届
- 助成金などの申請
労働社会保険諸法令に基づく帳簿書類の作成
- 労働者名簿の作成
- 賃金台帳の作成
- 就業規則の作成、変更
その他
- 紛争解決手続代理業務(厚生労働大臣が定める研修を修了し、同業務試験に合格した「特定社会保険労務士」のみ)など
その他、雇用や人材育成、人事、賃金、労働時間など人事・労務管理に関するコンサルタント業務などにも携わっています。最近は、雇用調整助成金をはじめとする新型コロナウイルス感染症に関連する各種助成金の申請業務に、重要な役割を担っています。
社労士の平均相場について
では、一般的な顧問社労士の相場をお知らせします。まず基本的に、顧問社労士に支払う金額は、自社の従業員数で変動するのが一般的です。
顧問契約の場合
顧問契約とは、毎月継続して社労士の仕事の全般をする契約です。顧問料に基づいて継続して仕事をすることを約束する契約なので、主に長期的に必要な仕事をすることになります。
- 従業員数5名以下の場合 :月額報酬1~2万円
- 従業員数10名以下の場合:月額報酬2~3万円
- 従業員数20名以下の場合:月額報酬4万円前後
- 従業員数30名以下の場合:月額報酬5万円前後
- 従業員数50名以下の場合:月額報酬6万円前後
個々の仕事の場合
長期的に全般を一括で任せる顧問契約の他に、短期的に仕事を個別に任せる場合もあります。
給与計算
社労士の仕事の中でも一番多い仕事です。給与計算の報酬相場は、従業員数によって変わります)
- 従業員数5名以下の場合 :月額報酬1万円前後
- 従業員数10名以下の場合:月額報酬1万5千円前後
- 従業員数20名以下の場合:月額報酬2万円前後
- 従業員数30名以下の場合:月額報酬2万5千円前後
- 従業員数50名以下の場合:月額報酬3万5千円万円前後
就業規則の作成・変更の場合
就業規則はどれくらいの数の条文や規定を設けるかによって金額が変わってきます。一般的な報酬額としては、就労規則の作成が15万~30万円程度で、変更の場合は約3万円程度です。
助成金関係の場合
助成金関係の場合は、相談をするだけであれば無料ですが、申請手続きについては助成金がおりた場合に報酬として社労士が助成金の1~2割を得るところが多いです。
人事労務管理の場合
人事労務管理は顧問契約とは異なり、長期的に全般を一括で任せる仕事ではなく個々の仕事として一つの仕事を任せる場合のことを言います。仕事内容として「相談・指導」「企画・立案」「運用・指導」とそれぞれの仕事は項目に分かれており、顧問契約のように単純な業務ではないため報酬も高いです。相場としては相談料が5万円、企画立案が50~100万円、運用と指導が5万円程度です。企画立案は報酬の額も極めて高いことが特徴的です。
飲食店が社労士と顧問契約を検討するタイミングとは?
では飲食店がいつ社労士に依頼するタイミングでしょうか?主なタイミングについてお知らせします。
従業員を雇用する時
従業員を雇用するタイミングで就業規則や給料計算、社会保険の手続きなどが発生してきます。専門性のある業務なので、自身で行おうとすると手間も時間もかかります。
そして、キャリアアップ助成金など、労務関係でもらえる助成金の申請も出来ますので、社労士と顧問契約をするタイミングになってきます。
従業員が数十名になり、労務トラブルが発生してきた時
従業員数十名となってくると、うつ病やパワハラ、人事評価に関する労務トラブルが発生し始めます。
こういった労務トラブル回避のための就業規則の作成をしなければ、会社にとって不利益な状況になってきますので、 社労士と顧問契約をするタイミングになってきます。
法令遵守が必要な時
法令遵守(※)が必要な会社を始める時(介護事業など)や上場の準備をする段階で、社労士と顧問契約をするタイミングになってきます。
開業して上記に記載しているような状況になる時には、社労士と顧問契約を結ぶタイミングと言えるでしょう。
まとめ
社労士は「人事・労務管理の専門家」です。
開業時には「人事」にはなかなか人を割くことは出来ませんが、必要になった場合には社労士に依頼することをお勧めします。「人事」に関する助成金も業務として遂行してくれますので、会社として大事な専門家と言えます。