ドッグカフェの開業に必要な資格・手続きや開業資金について
ドッグカフェの開業にあたっては、犬が大好きということは前提条件としてありますが、カフェ経営の知識も必要となります。
今回は、ドッグカフェの開業について解説していきます。
ドッグカフェの特徴
散歩途中に立ち寄るのがコンセプトで、ペットブームに伴ってドッグカフェの人気は急上昇しています。ドッグカフェは、コーヒーを楽しんだり、食事を食べたりと、基本的には普通のカフェと変わりませんが、飼っているペットを連れて一緒に飲食を楽しめるのが特徴です。
オープンテラス形式が多く、店内でペットが自由に歩ける店と、決められた場所にリードでつなぐ店とがあります。ドッグフードやグッズを販売したり、しつけ教室を開催する複合カフェの形態も増えています。
ドッグカフェ開業に必要な手続き・資格・許認可
ドックカフェなどの飲食店の開業に欠かせない資格・許認可は、保健所の「飲食店営業許可」と「食品衛生責任者」の資格です。さらには、「防火管理者」の資格、ペットフード安全法による農林水産省への届出、動物取扱責任者として第一種動物取扱業の登録が必要になる場合もあります。どんなドッグカフェを作りたいのかをよく考えた上で、必要な許可や申請事項を開業する地域の自治体に確認しましょう。
それぞれの資格・許認可について以下を確認してください。
- 飲食店営業許可
- 食品衛生責任者
- 防火管理者
- 農林水産省への届出
- 第一種動物取扱業の登録
飲食店営業許可:必須(問い合わせ先:保健所)
飲食店営業許可については、「喫茶店営業許可」でも構いませんが、料理の内容にこだわりたい場合には、「飲食店営業許可」のほうが良いでしょう。
- 飲食店営業:食品を調理し、または設備を設けて客に飲食をさせる営業
- 喫茶店営業:喫茶店、サロンその他設備を設けて、酒類以外の飲物または茶菓を客に飲食させる営業(自動販売機も含まれる)
食品衛生責任者:必須(問い合わせ先:保健所)
ドッグカフェ開業を保健所に申請する場合、一般的には犬猫用のメニューを用意するケースが想定されますので、以下のような点で通常のカフェ以上に衛生管理が求められる場合が多いです。
- 調理スペースと客席の間を扉や窓などで区切る
- 犬用の食器を使う場合は別の水回りを設置する
- 犬用に市販されているものを調理、盛付けする場合は厨房を別に設置する
- 客席に手洗い場を設置する
ちなみに、調理師免許などを持っている場合には、「食品衛生責任者」の講習が免除されます。
防火管理者(問い合わせ先:消防署)
店舗の収容人数が、店員も含めて30人以上になる営業施設では、「防火管理者」の資格も必要です 。事前に所轄の消防署に「防火対象物使用開始届出」や、工事をする際に必要な「防火対象物工事等計画届出」についても確認しましょう。
農林水産省への届出(問い合わせ先:農林水産業事務所)
ペット用のご飯やおやつをテイクアウト販売するには、ペットフード安全法に基づいて農林水産省への届出が必要になることがあります。
第一種動物取扱業の登録
看板犬を置いて営業するためには、動物の愛護及び管理に関する法律に基づいて第一種動物取扱業の登録が必要な場合があります。猫を預かって展示している形の猫カフェやペットショップと異なり、ほとんどのドッグカフェは顧客が犬を連れてくる形態です。ドッグカフェで犬を預かって看板犬として置かない限りは登録は必要ありません。
その他一般的な開業手続き
個人事業主として開業する場合、一般的な手続きとして、個人事業の開廃業等届出書、所得税の棚卸資産の評価方法・減価償却資産償却方法の届出書、青色申告承認申請書等を納税地の所轄税務署へ提出します。また、個人事業開始申告書は事業所所在地の都道府県税事務所へ。詳しくは、最寄りの管轄行政に問い合わせが必要です。
法人として会社を設立する場合、定款作成、会社登記をし、法人設立届出書、青色申告の承認申請書、給与支払事務所等の開設届出書、源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書、法人設立届出書(地方税)などを提出します。
ドッグカフェ用賃貸物件の契約は大変!?
ドッグカフェを開業するにあたって、市街地では賃貸物件で経営する方法が一般的ですが、この契約は、想像以上に難航することを知っておく必要があります。犬が出入りしたり、店内で飼育したりすることになりますから、どんなに注意をしていても犬の糞や尿などのゴミ処理や悪臭が苦情の原因となります。
また近所に飲食店などがある場合、他店舗との衛生面での問題も出てきます。その他にも、物件の契約期間や退去時の原状回復についても問題となる可能性があります。
複数の犬を常時飼育することで物件内に動物特有の臭いが付くことが心配されるため、契約時に、通常の契約より多くの敷金が必要となる可能性もあります。この点は開業前に具体的な対応策が必要です。
ドッグカフェの開業資金
ドッグカフェの開業資金の目安ですが、500~1,000万円と言われています。規模により幅はありますが、高い厨房機器に加えてオシャレな内装などにも多額の費用がかかります。一般的な事業の開業資金としては高めであり、厨房に犬を入れない衛生面に配慮した設計など、細やかな部分まで気を使わなければなりません。
開業当初から起動に乗ることは稀であるため、ある程度の運転資金も必要になってきます。運転資金は月々に係る費用の半年分程度は用意しておきましょう。
開業資金の調達方法
預貯金や退職金など、自己資産で開業資金を用意することが難しい場合には、開業資金を調達する方法を検討します。どれか1つの方法というよりは、まずは自己資金をできるだけ集め、足りない分は複数の方法を組み合わせて行うのが現実的です。
日本政策金融公庫
日本政策金融公庫とは、2008年10月1日に、国民生活金融公庫、農林漁業金融公庫、中小企業金融公庫、国際協力銀行の4つの金融機関が統合して発足した100%政府出資の政策金融機関です。全国に支店網があり、固定金利での融資や、長期の返済が可能など、民間の金融機関より有利な融資制度が多く、設立間もない法人やこれから事業を始めようとする人であっても、融資を受けやすいのが特徴です。
一般的な中小企業に関係する事業は、国民生活事業になり、国民生活事業は事業資金の融資がメイン業務で、融資先数は88万先にのぼり、1先あたりの平均融資残高は698万円と小口融資が主体です。融資先の約9割が従業者9人以下であり、約半数が個人企業です。サラリーマンには馴染みではないですが、理由として、銀行のように口座はなく、貸付のみだからになります。
創業者向け融資制度である「新創業融資制度」や認定支援機関の助言があれば無担保・無保証、金利が安価になる「中小企業経営力強化資金」という融資制度がお勧めです。
信用保証付の融資
「信用保証協会」という公的機関に保証人になってもらい、民間の金融機関から融資を受ける制度です。貸倒のリスクを信用保証協会が背負うので、実績のない創業者が民間金融機関から融資を受けることが可能となります。万が一返済が不可能になった場合は、信用保証協会が代わりに金融機関に返済し、その後債務者は、信用保証協会に借入金を返済することになります。信用保証協会は全国各地にあり、地域ごとに創業者向けの融資制度を設けています。また独自の融資制度を設けている自治体も多くあります。
手続きの手順としては、信用保証協会に保証の承諾を受け、金融機関から実際の融資を受けるという流れになります。また各自治体の制度を利用する場合は、自治体の窓口を経由することになります。
親族、友人・知人からの借入
親族・知人から借入をする際には、その人の好意でお金を借りることになります。先々トラブルにならないようにしっかりとした取り決めをおこなっておくことが重要です。いくら近い間柄とは言え、お金を貸す側の心理としては複雑なものです。また、後々トラブルになりやすい資金調達法でもあるため、甘えてしまわないよう入念な説明と借用書などを交わすなど、お互いが納得のいく取り決めをしっかりとしておきましょう。
その他注意点として、金額によっては贈与税を納めなくてはならないので、実施する場合は、贈与とみなされないよう書面(金銭消費貸借契約書)を作成したほうが良いでしょう。また、利息など契約内容も明確にし、返済は銀行口座を通じたり、領収書をもらうなどして、証拠を残したほうが良いでしょう。
ドッグカフェの開業のポイント
最後にドッグカフェの開業のポイントについてお知らせします。
みんなが安心して利用できるように「ルール」を定める
基本的には、ドッグランなどの施設のルールと同じですが、不特定多数のワンちゃんが訪れるため最低でも以下のルールは周知してもらえるようにしましょう。
- 予防接種を受けている
- ノーリード禁止
- テーブルに乗せるのは禁止
- 大型犬はテラスのみ入店可
- 人用のお皿から犬に物を与えるのは禁止
- 基本的なしつけができている など
ドック用メニュー
ドック用のメニューは、あまり手間がかからずにかつ、安全・安心なメニューを心がけましょう。レシピを一緒にお渡ししても喜ばれるかもしれません。犬には絶対に食べさせてはいけない食材や、消化が苦手な食材などがあります。そういった知識もしっかりと勉強しておきましょう。
例えば、犬にタコ・イカなどは与えてはいけません。消化が悪く、消化不良を起こしやすい食材だと言われています。また、ネギ類は犬の赤血球に反応し、複数の症状が起こる可能性があるため、絶対に与えてはいけないと言われています。このように、犬全般に与えてはいけないものもありますし、犬それぞれでもアレルギーを持つ犬も多いので、メニューには必ず材料表示をするようにしましょう。
飼い主さん用メニュー
飼い主さんのメニューには、両手が塞がらないメニューを準備するようにしましょう。両手がふさがってしまうと、瞬時に犬を抑えるなどの行動に制限がでてしまいます。犬を気にかけながら、気軽に飲食できるメニューが理想です。
複合的な場所の検討
ドッグカフェだけで運営することももちろんOKですが、犬の飼い主さんが集まる場所なので、以下のサービスなどが展開できると、より多くのニーズを得ることが出来ます。
- 物販スペースを設ける
- ドッグランを併設する
- トリミングサロンを併設する
ただし、新たに始めるサービスの種類によっては、開業届等の変更が必要になることがありますので、事前にしっかりと確認しておきましょう。
まとめ
ドックカフェは、通常のカフェより続けていくのは難しいことです。憧れだけでは経営できませんが、自分が大好きな犬たちと、その飼い主さんたちが喜んでくれる場を作るという目標を掲げて頑張りましょう。