飲食店の廃業率が高い理由と廃業する方法について解説
飲食店にとって、2020年以降のコロナ禍は大変な痛手だったでしょう。せっかく開いたお店なのに、パンデミックによる事業縮小を余儀なくされたり、廃業せざるをえなくなったりするケースも多いかと思います。
ただコロナの影響も多いですが、コロナ以前から飲食店の廃業率は他業種に比べて高いのも事実です。一般的なデーターとして、おおよそ1年で30%、2年で50%のお店が廃業している結果もあります。ではなぜこれほどの確率で廃業に至ってしまうのでしょうか?
そこで今回は、飲食店の廃業率が高い理由と廃業する方法について解説していきます。
飲食店の廃業率が高い理由とは?
なぜ日本では飲食店の廃業率が高くなっているのでしょうか。以下にていくつか考えられる理由を紹介します。
初期投資額が大きい
まず、初期投資に多額の費用がかかるということが挙げられます。飲食店を開業するには、物件の費用に加えて、空調や厨房の器具などの内装工事に多くの費用がかかります。一般的に、500万円から1,000万円程度の初期投資が必要です。
拘りも必要ですが、出来るだけ切り詰める所は切り詰めて節約することも大事になってきます。
競合の店舗が多い
中小企業庁が公表している、令和元年度の中小企業の動向によると、飲食業界は開業率が全業種の中でも最も高いことがわかります。開業率の高さはそのまま競合の増加につながるため、競争の激化は避けられません。
解決策としては、地域に合わせた開業を実践するとともに、競合との差別化を推し進めていくことが求められます。
充分な資金が確保できていない
新規開業することは、夢を描いている段階では大きな目標でしょう。しかし、開業はあくまでもスタートラインです。少なくとも初期投資を回収するまでは、営業を継続して利益を出さなければなりません。
営業を続けるには多くの運転資金が必要です。特に飲食店は開店から数ヶ月は赤字続きになる可能性が高いでしょう。ですから、初期費用だけでなく数ヶ月の運転資金をあらかじめ確保しておかなければなりません。
資金確保のためには、民間銀行から融資を受けることもできますが、実績がないとなかなか貸してくれないでしょう。飲食店を新規に始める場合は、日本政策公庫など公共の機関から資金を調達するのがおすすめです。
一度始めたらやり直しがきかない
飲食店の難しさは、一度始めたらやり直しが効きにくく、そのまま廃業に至ってしまうことが多い点です。飲食店を開業したものの失敗したことに気付きやり直そうと思っても、業態変更にはお金と時間、精神力が必要です。大手飲食店チェーンであればやり直しが効いても、個人経営の飲食店は簡単にはいかず、廃業してしまうケースがあります。
また、自身が良いアイディアだと思ったコンセプトも、開店する地域に合ったコンセプトでなければ失敗する確率は高くなり、その地域で失敗すると同じ地域での立て直しは難しくなります。飲食店を開店する経営者には異業種から参入するケースも多いですが、異業種からの参入は参入してから気づく課題が大量にあり、解決していくには相当の覚悟が必要です。自力での立て直しが難しければ、経験者やプロデュースのプロに頼ることも検討する必要があります。
経営者の年齢層が高い
厚生労働省が2016年に公表した「飲食店営業(一般食堂)の実態と経営改善の方策」によると、飲食店経営者のうち60歳以上は54.5%と過半数を占めました。特に、個人経営の場合は70歳以上が25.7%と、株式会社(15.2%)、有限会社(19.3%)に比較して年齢層が高めでした。さらに、「後継者あり」と回答した経営者は、個人経営(37.1%)、株式会社(62.4%)、有限会社(53.2%)となっています。ここから、特に個人経営者の場合に後継者の確保が難しい課題となっていることがわかるでしょう。日本の人口そのものが減少していくなか、飲食店が後継者不足で廃業せざるをえなくなるという事態は避けられないかもしれません。
自分のやりたい味・お店にこだわりすぎる
自分のお店を持つという大きな夢を叶えたからには、自分のやりたいお店」「皆に食べて欲しい味を提供したいと思うものですが、ビジネスは「需要と供給」で成り立つものですので、必ずしも自分が思い描くお店・味がお客様にマッチするとは限りません。
まずは「お店のコンセプト」をしっかりと定め、その土地で開店することに勝算があるのかをしっかり調査することが重要です。また店のコンセプトに従って商品開発をしますが、お客さんに食べてもらいたい物ばかりに注力するのではなく、お客さんが食べたいと思っている物を提供するのがビジネスでもあります。店の主力商品より、サブで開発した商品の方がウケが良いとなれば、サブ商品を磨き上げることで利益が大幅に伸びる可能性もあるわけです。
一方で自分の提供したいものにこだわり続けると、逆に赤字を出す可能性もあるため、どこに時間と資金を投下していくのがベストなのかを日々考えなければなりません。「こだわり」と「柔軟性」は上手く持ち合わせられるように心掛けたい所です。
飲食店を廃業する方法
飲食店を廃業する方法は、大きく以下に分けられます。それぞれ異なる特徴があるので、順番に説明します。
- 店舗を売却する
- 業態を変える
- 第三者に業務委託する
- M&A・事業譲渡する
店舗を売却する
飲食店の店舗売却は、居抜きで行われることが多いです。厨房や空調などの内装設備をそのまま持ち越すことができるので、売り手・買い手の双方に金銭的なメリットがあります。
ただし、事前に貸主の許可を得ておくことが前提となります。無許可で話を進めていると、居抜きではなく原状回復を行ったうえで売却しなくてはならなくなることもあります。
業態を変える
こちらは廃業せずに、業態を変える方法です。業態を完全に転換させることもあれば、昼と夜で業態を切り替えるスタンスもあります。
ただし、業態を変えるためには、一定以上の時間と費用が必要になります。中途半端な状態で踏み切ると業態転換が失敗する可能性もあるので、事業計画や資金調達などの入念な準備が欠かせません。
第三者に業務委託する
こちらも廃業せずに飲食店を存続する方法です。第三者に経営を任せることで、自身は別の事業を行いながら継続した収入を確保することができます。
ただし、不動産の契約はそのままなので家賃の支払いは継続しなければなりません。経営が悪化して赤字になった場合は、業務委託料と合わせて金銭的な負担となるデメリットもあります。
M&A・事業譲渡する
飲食店をM&A・事業譲渡で第三者に譲渡する方法があります。不動産契約や飲食店の経営権を譲渡することで、引き続き経営してもらうという方法です。
飲食店の価値に応じた売却益の獲得や、飲食店は存続するので従業員やリピーターに迷惑をかけることがないなどのメリットがあります。
まとめ
いかがでしたでしょうか?今回は、飲食店の廃業率が高い理由と廃業する方法について解説しました。
飲食店は、開業数の多い一方で廃業数も多いという、難しい面のある業態です。しかし、適切な対策を講じることで廃業を回避することは可能です。憧れの飲食店を開業したのですから、ぜひ続けられるよう、対策について検討してみてください。