【飲食店開業】外国人雇用に際しての注意点
人手不足が続く「飲食業界」で、人手不足解消はもちろん、インバウンド対策など、飲食業界の救世主になるのが「外国人雇用」です。
今回は、飲食店における外国人雇用する際の注意点を解説します。
外国人の雇用には「資格」が必要!?
外国人の方を雇用する際は、その方が日本で働くことができる在留資格があるかどうか、所持している在留カードで確認することが必要です。
以下の在留資格保有者は飲食店で働くことができます。
- 定住者:法務大臣が特別な理由を考慮し、5年を超えない範囲で一定の在留期間を指定して居住を認める人(日系人など)
- 永住者:在留期間の制限なく永住できる人
- 日本人の配偶者等:日本人と結婚した人・子・特別養子
- 永住者の配偶者等:永住権をもった人の配偶者
- 留学:留学の滞在資格を取得して在留している人
- 家族滞在:就労ビザを取得して日本で働いている人の配偶者・子
- 特定活動:他の在留資格に該当しない活動の受け皿として、法務大臣が活動を指定する在留資格
- 技能:特殊な分野に属する熟練した技能に従事する活動(外国料理の調理師など)
- 特定技能
在留資格が「定住者」「永住者」「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」の4資格は、就労の職種の制限はありませんので、「飲食物調理」「接客・給仕」のいずれにも就労が可能です。
料理人として就労させるためには、「技能」資格が必要になります。この場合の「技能」とは、『料理の調理又は食品の製造に係る技能で外国において考案され我が国において特殊なものを要する業務に従事する者』の規定があり、そば・寿司等の日本料理店での就労は許可されません。ただし、農林水産省が推進する『日本料理海外普及人材育成事業』の要件を満たしていれば大丈夫です。
そして、外国人労働者をアルバイトで採用する場合と正社員として採用する場合で条件が異なってきます。
在留資格・在留期間・資格外活動欄の確認が必要です。採用可能な在留資格は、就労制限がないものと、就労制限があるものに分けられます。
就労制限がない資格
就労制限がない資格は定住者、永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等です。これに該当すれば、日本人と同じように制限なく働くことができます。
就労制限がある資格
就労制限がある資格(留学・家族滞在・特定活動)でアルバイトをするには、「資格外活動許可」が必要です。在留カードの裏にある「資格外活動許可欄」を見れば、「資格外活動許可」の有無が確認できます。それぞれの就労制限は以下の通りです。
留学ビザ:週28時間以内。夏休みや冬休みなどの長期休暇時は、1日8時間以内で学業に支障がでない程度。
家族滞在ビザ:週28時間以内
特定活動ビザ:取得条件によって異なる。パスポートに添付されている指定書内の活動内容詳細を確認することが必要。
以下の在留資格を取得している人が対象となります。
- 定住者
- 永住者
- 日本人の配偶者等
- 永住者の配偶者等
- 技能、特定技能(一定条件を満たしたもの)
対象業務:外食業全般(飲食物調理、接客、店舗管理)
条件:技能試験「外食業技能測定試験」(一般社団法人外国人食品産業技能評価機構の試験)、日本語試験(「国際交流基金日本語基礎テスト」もしくは「日本語能力試験・ N4以上」)に合格した人
2019年4月より新設された「特定技能」(特定技能1号)ビザを取得すれば、飲食店でも外国人を正社員として募集・採用できるようになりました。ただし、風俗営業店(バー、キャバクラ、スナック、クラブ、パチンコ)においては、皿洗いなどの仕事であっても働けないので注意が必要です。
採用にあたり、在留カードの在留資格と、パスポートの資格外活動許可証確認は必須
採用に当たっては、まず在留カードを確認してください。在留カードは、従来の旅券になされる各種許可の証印等に代わって許可の要式行為となるため「許可証」としての性格を有しています。応募してきた外国人に対しては、まず「在留カード」の提示を求めてください。特別永住者の方を除き、在留カードを持っていない場合は、原則として就労できません。
提示があった場合は、まず基本情報を確認です。基本情報は「氏名」「生年月日」「性別」「国籍・地域」「住居地」「在留資格」「就労制限の有無」「在留期間」です。ポイントになるのが「在留資格」「就労制限」の有無です。在留資格が「留学」だった場合、就労制限の有無は「就労不可」になっています。ここで在留カード裏面の「資格外活動許可欄」を確認してください。しっかりと確認したい場合、入国管理局のホームページ内にある「在留カード等番号失効情報照会」画面に、在留カードの番号と有効期間を入力すると、有効かどうかをチェックすることができます。
外国人採用のメリット
お客さまへ多言語に対応できる
英語や母国語を話す外国人スタッフを採用すると、お客さまへの多言語対応が実現します。近年、飲食店では多言語での対応を求められることが少なくありません。お客さまにあわせた言語で接客することで、トラブル防止や快適な滞在につながるためです。日本語と外国語を話せる外国人スタッフを採用することで、人材育成の時間やコストを軽減できます。
日本人スタッフの外国人慣れを創出できる
日本人スタッフの外国人慣れを促します。雇用した外国人スタッフの接遇・接客を見て学ぶことで、訪日外国人観光客に対するノウハウが蓄積できます。
勤務意欲が高い
個人差はありますが、わざわざ海外から日本に来て仕事をしている分、日本人に比べてやる気がある人が多いと言えます。
提供するメニューの幅が広がる
外国人スタッフから世界各国の文化・料理・調味料・食材を知る機会が生まれ、メニュー幅に広がりを持たせることができます。
外国人採用のデメリット
外国人雇用にかかわる法令・制度が煩雑になる
外国人を雇用するにあたって関連する法令・制度についての知識やノウハウがなく、採用後にトラブルに発展する可能性があります。
ビザの申請など手続きがややこしい
外国人採用はビザの申請など手続きがややこしいです。複雑な手続きであきらめてしまうことも多く、優秀な人材を確保するチャンスを失ってしまいます。
円滑なコミュニケーションができない場合がある
ネイティブレベルの日本語ができない場合、日本人スタッフとのコミュニケーションや、指示出し・実行などがスムーズにいかないこともあります。
文化や習慣の違い
文化や価値観の違いから、時間に対して日本人ほど厳格な意識を持っている外国人は多くないでしょう。また、非常にドライな考えを持っている人も多く、他に良い条件のアルバイト先を見つけるとすぐに移ってしまう場合もあります。
既存日本人スタッフからの反発
外国人を重用することでの日本人スタッフからの反発が出る可能性があります。最悪の場合には日本人スタッフ、外国人スタッフ両方とも退社してしまい、余計な採用コストと労力が発生する可能性があります。
外国人の採用方法
外国人の採用方法について、主に以下の4つの方法があります。
- 大学や専門学校などからの紹介
- ハローワークなど公的機関の活用
- 求人サイトへの掲載
- 現在雇用している外国人からの紹介
まずは、外国人が通っている大学や大学院、専門学校などのキャリアセンターで、外国人向け求人を出すことができます。専門知識のある優秀な学生も多いため、専門職の募集におすすめです。
そして、ハローワークなど公的機関では、地域ごとに外国人を専門とした人材紹介にも取り組んでいます。ハローワークの活用方法は、求人を出すだけではありません。就職説明会なども開催しているため、参加によって多くの外国人と出会えます。
求人サイトについては、キャリアクロス、NINJA、doda、Bridgers、Indeedなどがおススメです。外国人から人気の高いサイトを活用することで、効率よく採用活動をすすめることができます。
最後に、雇用している外国人のスキルや人間性が良い場合、その友人・知人の外国人を紹介してもらう方法も得策です。相乗効果が生まれたり、何より採用コストがゼロになります。
まとめ
外国人採用において「在留資格」は欠かせません。そして日本に滞在している外国人には、「在留カード」が支給される決まりです。
この在留カードは「日本での滞在に違法性がないこと」を証明する身分証明書で、長期滞在する外国人は所持する必要があります。また在留カードは、就労ビザの取得においても欠かせません。日本国内に住む外国人を募集する場合、在留資格のない外国人は採用できないため、注意してください。