【飲食店】従業員の不正行為に対する事後対応と予防策について解説
飲食店において、経営者が気づかないうちに、売上金の横領・着服、食材の横流しといった従業員の不正が起き、損失を招いている可能性があります。「従業員の事は信頼している」と思っていても、不正は条件さえ揃えば誰でも起こしうります。不正防止の環境を整えるのは、経営者として従業員を守るためにも重要になってきます。
今回は、従業員の不正行為に対する事後対応と予防策について解説していきます。
飲食店の不正行為例
ほぼすべての事業者にとって、従業員の不正行為は頭を悩ませる種になります。ここでは飲食店の不正行為例をお知らせします。
売上金の抜き取り、着服
レジを通さずお客様の支払ったお金をそのまま持ち出したり、レジを通した後に取り消し・削除などの操作を行ったり、レジの中から金銭を抜き取る行為です。実際には飲食店でよく聞かれる従業員の不正行為の代表例です。売上伝票が通し番号になっていない場合、後で調べることができません。小さな額を少しずつ、日にちをわけてといった方法で、ポケットに入れてしまえば、気づくことは難しいでしょう。
料理や食材を勝手に食べる、持ち帰る
厨房や倉庫などにある料理や食材をスタッフが勝手に食べていたり、余っているからと持ち帰ってはいませんか。残ってしまったものを廃棄するのはもったいないからとオーナーや責任者が許可する場合は問題ありませんが、勝手に食べたり持ち帰る行為をしていると、余分な材料費・廃棄費用などを正しくみることができず飲食店の経営数字に影響がでます。これらの行為は複数のスタッフで当たり前のように行われており、悪気なく行っている場合もあることが特徴です。
仕入れ業者との癒着
従業員が仕入れ業者と組んで、レジ現金からの支払いをわざと多くして、分ける行為です。「信じられない」という飲食店経営者もいらっしゃいますが、実際にはよく聞かれる従業員の不正事例の1つです。
従業員が突然、退社(バックレ)
民法上では2週間前に退職の申出をする必要がありますので違法行為となります。しかしながら、実際にはお店が多額の損害を受けない限り損害賠償も困難ですし、無理やり働いてもらってもお客様と他の従業員の迷惑となるだけですので、事前に退職や懲戒に関するルールを明確にしておくことが大切になります。
事後対応はどうしたらよいのか?
不正の事後対応は基本的にケースバイケースですが、最も重いペナルティで一生ついてまわる懲戒解雇や刑事告訴については、基本的に難しいと考えた方がいいでしょう。従業員本人も抵抗するでしょうし、会社や他の従業員の負担にもなります。
経営者が不正をした従業員を置いておけないと判断した場合、自主退職で去ってもらうのが最もいいでしょう。信頼していた従業員を訴えるのは不幸なことです。多額の損害が出てしまったため、回収する手段と捉えるのならば仕方ありません。しかし、懲戒免職・刑事告訴の前に、まず、本人に不正の事実を認めさせることが重要なポイントです。その上で以下のステップを踏むとよいでしょう。
示談にする
本人と話し合い、返済計画を立てて順次回収していくケースになります。個人の場合、家や土地といった物的保証を押さえるのは難しいでしょう。人的保証で債権を守ることも検討してください。
身元保証人に請求する
入社の際には、両親や親族を保証人とする『身元保証書』を提出させていると思います。損害額を本人から回収できない場合は、身元保証人に請求することができます。ただし、「身元保証書」には有効期限があります。特に定めがなければ保証期間は契約成立の日から3年、長くて5年となる点に注意が必要です。
退職金と相殺する
不正があった場合、退職金は、支給なしか減額ですが、過去の会社への貢献度など、情状酌量の余地があるのであれば退職金と相殺し、回収に充てた方が得策でしょう。法的な損害賠償などは行わずに円満退職してもらい、退職金と相殺という現実的な対応も一考です。
不正を未然に防ぐ予防策とは?
放任主義にしない
スタッフへ任せっきりにして、経営者自身も数字の管理・在庫の管理・スタッフの管理など管理業務が疎かになっていませんか?ほかの業務を優先するため信頼するスタッフへ任せているから、このくらいは大丈夫かという考えではいけません。放任と信頼は違います。定期的または抜き打ちチェックでスタッフにも緊張感を持って取り組んでもらいましょう。
売上と現金、棚卸残高を日々確認する
レジの打ち出し金額と現金残高を毎日合わせることは必須です。売上のおかしな動きといった異常を察知できれば、不正の早期発見につながります。棚卸で数量不足が明らかになれば、食材が横領されていることに気づけるでしょう。
POSレジやPOSレジシステムを利用する
現金の取り扱いに関わる不正を防止するのに絶大に効果的な方法です。また、その他の業務に関わるメリットも多く、会計ミスや、人件費の削減にもつながります。1日の売上金の計算も、レジとの連携が可能な釣銭機なら自動で行うことができ、不正防止のみならず業務効率の向上にもつながります。
支払方法の変更
直接手渡しやレジから抜き取る形で支払う場合にミスや不正が起こりやすくなります。そのため、納入業者への支払いや給与支払いは銀行振込などお金に触れなくて良い方法をとりましょう。どうしても手渡しの場合はその場でレジから抜き出さず、あらかじめオーナー自身で準備しておきます。
防犯カメラの設置
常に監視していなくても、抑制効果につながります。レジや入口周辺だけでなく、厨房や倉庫内に設置しておくことで、勝手な飲食や食材の持ち出しを防ぐこともできます。
採用時の誓約書
不正に関する誓約書を準備しておき、採用時にサインをしてもらう方法も効果的です。罰則など厳しいルールを伝えておくことで抑制効果が期待できます。
まとめ
経営者として従業員に疑いの目を向けるのは辛いですが、不正が起きてからでは遅いです。食材や売上のずさんな管理が不正を生むのであれば、その機会を与えた経営者にも責任があります。自店舗のスタッフを犯罪者にさせないよう、不正防止の仕組みづくりに取り組んでいきましょう。